バレイショ遺伝資源開発学講座

国立大学法人 帯広畜産大学
〒080-8555 北海道帯広市稲田町西2線11番地

PGEL便り

このページでは日々の研究室の様子を紹介します。


完了芋掘り、続投調査

秋の紅葉

10月9日をもって長い長いなが~い2020年度のイモ掘りが終わりました。今年は悪天候プラス広面積の収穫作業のために心身ともに疲労困憊しました。ですがまだ、十勝の生産畑ではイモ掘りが続いている様子です。夜でも収穫機の光が煌々としています。ビートや豆の収穫も始まっている中、皆さん霜が降りる前に掘り終わることを願うばかりです。

収穫1収穫2

選別1選別2

また、掘り上げても喜んではいられず、当講座の温室の作業場には各圃場から掘ってきたイモが山積みになっており、これらのイモ洗い、仕分け作業、収量調査、打撲試験などさまざまな調査と選抜にどれだけ時間がかかるのだろうかと呆然とコンテナを眺め立ち尽くし、ゲッソリしてしまいます。そんな気が折れそうな作業は決して一人ではできません、有難いことにバレイショに興味を持ってうちの研究室に所属してくれている学生さんが率先して手伝ってくれています。本当に感謝です。今月から新たに2名がメンバーに加わり、早速、ストロンの長い野生味の強いイモ掘りに悪戦苦闘しながらも参加してもらい、半日を通して、イモ掘り、食味試験、選抜作業、収量調査、比重測定という現場の作業を全てこなしてもらいました。卒業研究のテーマも決まり、これからさらに、交配作業、DNAマーカー選抜、顕微鏡観察、ゲノム解析まで幅広い分野で学んでいけるようにこちらもしっかり準備したいと思います。今年はバレイショ研究者の皆さまとの情報交換会の場でもあった次世代バレイショセミナーも中止になってしまい残念ですが、私達の研究内容につきましては近々HPにもアップしていきたいと思います。冬まであとわずか、冬季シーズンに向けての秋の仕事が順調に捗りますように。

(2020年10月10日 實友)


身にしむ秋 ナナカマドの実

9月も下旬となってしまいましたが、お便りの更新です。
というのも、意識が朦朧とした猛暑の8月以降、天候は打って変わって2週間以上に渡る長雨続きでイモ掘りが一切進まずに進捗状況をお伝えできなかったためです。もう待ってはいられない!っとドロ沼化した畑にハーベスターを入れてしまい、二進も三進もできなくなっている姿を何件か見ました。丹精込めてようやく出来上がったイモが畑にあるのに、手がつけられない歯がゆさ、どうしようもない焦り、苛立ちは何よりも心が苦しくてたまらない心境だと思います。全てはお天気次第の日本の気候ですので、多少は仕方ないと思う心が必要なのでしょうが、辛いことに変わりはありません。仕事が集中しますが、天候の合間を見計らって無事に収穫を終わらせられることを願っています。そして、これから頻繁にやってくるであろう異常気象に少しでも対応できる策をそれぞれが企てていかなければいけませんね。(右の写真は、見たことないくらい豊作のナナカマドの実)

私達の畑もようやくスタートできました。今年は1個重が大きい感触です。デンプン含量の方が心配ですね。体壊さずしっかり食べて頑張りましょう。

Sarpo Mira1Sarpo Mira2long stolon
今年のイモ掘りようやくスタート(立派なSarpo Miraのイモ)(左2枚)
ストロンが長すぎる残念なPGEL系統(改良中)(右)
(2020年9月22日 實友)


休みはなくても、「夏休みの青空」があります。

イモ畑
黄昏時のイモ畑

十勝にも停滞していた淀んだ灰色雲たちがようやく出て行き、カラッと爽快な青空が数日間やって来てくれました。色々な事に気疲れしている昨今ですが、そんな気持ちも全て清算してくれる十勝の大自然ならびに、それと人との共同合作の景色に大大大感謝しています。10年見続けている光景であっても嬉しく思います。

ゴボウ畑麦稈ロール
黄昏時のゴボウ畑(左)、今年も麦稈ロール(右)

ムギ刈りは先週の1週間でほぼ終わり、さて次はバレイショの番です。曇りの割には降雨量が少なかったので、早生品種は生育終了したものもあります。晩生品種は徒長して倒れてどれも畑の上で寝ています。そして、今年は何故かマメコガネ(俗名:Japanese beetle)が大量発生し、葉をバリバリむしゃむしゃ食べています。やめてくれ~!!さらに、昨年のアブラムシがPVYの感染を広げていたらしく、今年はPVYの病徴(モザイク葉)が結構な箇所で問題になっています。当代では病徴がほとんど見えませんが、次代の病徴は明らかです。良い抵抗性遺伝子は3種類もありますよ!!こんなウイルスに負けていたらいけません!うちでも選抜をどこかで誤っていたらしく抵抗性がない系統を選んでいて、先日畑で見事に感染が発覚!これからの品種はPVY抵抗性遺伝子必須です!必須です!必須でーす!!育種家の皆さん絶対入れてあげてくださいネ!

花盛り1花盛り2PVY感染株
花盛りのPGEL系統たち(左2枚)、PVY感染株(右)

では、ZOOM授業もマスク+フェイスシールド実習もそろそろ終盤、替わりましてこれからイモ掘りシーズン、張り切っていきたいと思います。

(2020年8月4日 實友)


雨のち雨

3週間に渡り毎日雨が降り続き、恵の雨だったはずが、止んでほしいと願うばかりになりました。雨の切れ目をめがけて畑の作業に出かけますが、間延びして倒れてしまった植物に対してはどうしようもないのかと見下ろすことしかできません。バレイショ畑は花盛り、コムギの穂は大きく膨らんでいます。持ちこたえてほしいです。



6月のお便りの更新が出来ずじまいでしたが、大学では構内立ち入り禁止の自粛が続いています。来週ぐらいからようやく少し緩和される見込みですが、遠隔で授業を行う側も受ける側も、サポートする側も、いろいろな面で皆辛抱しています。私達の仕事量は増える一方で、この期間中、辛い思いをたくさんしましたが、後退するのではなく、この苦しい経験を前進する力へ変えてければと思います。長雨が降っても、風が吹き荒れても倒れないように仕事をこなしていく術と強い軸をもって…

(2020年7月7日 實友)


イモがイモであるが故に

十勝に桜が咲きました。開花→満開→葉桜の期間はほぼ同日、長くても2、3日です。なので、まさに「一瞬」という言葉が相応しい切ない刹那桜です。また、サクラだけでなく、校内はたくさんの花々に溢れています。


エゾヤマザクラ(左)  キタコブシ(右)

大学では明日から検問が開始され、正面入り口以外は閉鎖されます。大学に来た学生は理由書を書かされます。学びの館である大学は、もはや来ては行けない罰則の館になってしまいました。とても悲しいことです。平和になって早く学生さん達と春の十勝を一緒に感じたいです。大学に来れない方々に代わって花盛りの校内の様子を写真でお届けします。


校内で満開のスモモ(左)  オオバナノエンレイソウ(右)

出勤禁止令で育種を担うチームが解体されて最も損失を被るのはバレイショ育種ではないかと思います。イモは重い!ほとんど水分なので私達は懸命にミネラルウォーターを運んでいるようなものです。そしてイモは大きい!広い面積が必要です。そんなヘビー級作物なので、バレイショ栽培も育種もチーム作業でなければ成り立ちません。
しかし一番の問題は、イモがイモ(=クローン)であることです。写真は先日の種撒き直後の様子ですが、1トレーにゴマ粒より小さな種が200粒ずつ撒かれています。まだ生を受けないその1粒1粒が違うものなので、ここで芽が出ないイコール、この世に一度も存在せず消滅することになります。晴れて芽が出て育った赤ん坊植物体は1~5個のイモを付けます。そのうちイモ1個を次の年、畑に植えます。この畑でも、1個1個が違うので、もし芽が出なかったら同じくここでこの世から消えます。芽が出て成長して、1株から10個ぐらいのイモを付け、ようやく自分の分身(クローン)をこの世に確保します。見栄えよいイモを作ったものだけ育種家に拾われ、次の年に植えられます。この時点が「点」(1株ずつ違う)だとすると次の年は「線」となり、1株から得られたイモ(クローン)を8個ずつ植えられます。もっと植えたくても、昨年拾ってきたイモが10個ほどしかない(=まだこの世に10の分身しか存在してない)ので、この数が限界です。その次の年は8株から得られた何十個かのイモを基に「面」で評価されます。約24~32個ぐらい植えられますが、数はそれが精一杯です。次の年はようやくイモの数に余裕ができて、反復を設けた「面×n反復」で評価されます。そうやって毎年毎年少しずつしか増えないイモを大事に増やし保存し、を繰り返しながら選抜していくのがバレイショ育種です。なので、もし、今年は1個ずつしか植えてはいけませんと言われたら、そこから10個しかイモが取れず、来年は「線」からやりなおし、つまり少なくとも2~5年前に戻されることになります。仮にもし、今年は植えてはいけませんと言われたら、そこで皆この世から消滅します。育種はthe endです。なぜならイモは種子と違いイモの老化を止める魔法の保存方法がない限りは来年まで保管することができないからです。来年植えるイモが無くなるイコール、そのものは絶命します。ゴマ粒の種子から幾年もかけて毎年コツコツとイモを何十個かに増やしてきたのに、こんなことになると悲劇です。でも悲劇になることはみんな分かっているので、20人チームだったのが3人になったとしても、どんなに無理をして身を削っても、産みの親として日の目を浴びる品種を創る使命を受けている限りは彼らの命を絶やせず、せめて来年の種イモ確保のために必死で植えてやらなければいけません。

イモ(塊茎)による栄養繁殖をやめて、もしバレイショでも種子繁殖ができれば…こんな被害は免れるのか。そんな考えの基で作った材料を先日植え付けましたが、さて増殖能力やイモの齢の制圧から解放される「種播きバレイショ育種」ができる日は10年先か、20年先か、30年先か、それとも数年先か‥‥できればこんな状況が来る前に出来上がっていればよかったですが、なにせヘテロ接合性の高い4倍体作物というのがバレイショの特徴ですので、それを一切捨て去り全く別の作物として今の能力に追いつかなくてはいけません。何とかしなければいけない現実だらけです。
こんなヘビー級の体力勝負を強いられる作物ですが、近い将来皆が無理なく楽々とバレイショと向き合える日々がくるように、どうかこれからも頑張らせてください。今年は、2、3名で10~15人馬力、絶賛植え付け中です!

(2020年5月9日 實友)


渡り: migration

渡りの季節になりました。ハクチョウの大軍勢が雪解けの畑を踏み散らかして旅立って行き、代わりにヒバリの大軍勢が騒々しく春霞の空へ空中浮揚にやって来ました。


一週間で移り変わったハクチョウ畑のbefore(左), after(右)

ある夜に奇妙な鳴き声がして目覚めました。おそらくそれは真夜中に十勝の空を通り抜ける何かの鳥でした。彼が誰で何処から来て、何処へ行くのか、彼をよく知っている者しか分かりません。

この4月、共に仕事や研究に励んできた方々も各地へ渡っていきました。長い仲間では10年以上の付き合いでした。移動の多い職場では移り変わりが当然の行事ですが、懸命に仕事に取り組んできた場を離れる事は誰でも多少の切なさを感じるのではないでしょうか?そんな事言ってはられないし、分かってるし、仕方ないし、自分だけでないし、誰に言うこともないし、次があるし、むしろ楽しみだし…。という気持ちで新しい生活へ繋げていくのだと思います。が、もし、バレイショに携わってきた日々を思い出した時は、一緒に畑で仕事した私たちは、皆さんの残して行かれた功績を活かして引き続きバレイショ界のために汗を流していて、いつも皆さんの事を忘れていないことを同時に思い出してください。名もなき鳥が何処から来て、何処へ行くのか分からないのはその鳥を知らない者です。私たちは皆さんを良く知っています。
本当にお世話になりました。新天地では全く異なる仕事をされる方々がほとんどで、もう一緒に仕事をする機会はないかもしれませんが、これからのご多幸を心より祈っています。

最後になりましたが、今年度も当講座は、中間母本系統の抵抗性遺伝子の多重式検定、 細胞質雄性不稔性のメカニズムの探索(右上の写真は、S. verrucosumの完全雄性不稔には見えない可憐な花)、 受精障壁の解明、 打撲の研究、 2倍体育種の材料づくり、収量およびデンプン関連遺伝子のマーカーづくり等、盛りだくさんのテーマでそれぞれが課題解決へ向かって研究、育種に取り組んでいます。どうぞ、ご支援宜しくお願いします。


現在の温室の様子(左は交配作業中、右は植え替え作業中)

心配していた inbred lineのおそ~い出芽

(2020年4月4日 實友)


卒業生より

新型コロナウイルス拡散防止のために、卒業式を失ってしまった今年の卒業生でありますが、当研究室では最後まで楽しく皆で送り出すことが出来ました。3名の卒業生のこれからのご活躍とご健闘をお祈りしています。以下、卒業生より最後のメッセージです。(實友)

ここで過ごした1年半を振り返って


オーストラリアのマーケット(左)・卒業旅行のベトナムにて(右)(池永)

まず、私が實友研究室に入った理由は、他の研究室で扱っている作物(主にイネ、コムギおよびアズキ)と比べると、バレイショはイモを付ける変わった作物であるため、この研究室に入ると珍しい研究ができると思い選びました。何気ない気持ちで選んだつもりでしたが、1年半の間、この研究室で過ごしているうちに、この研究室を選んで最高だったと思えるようになりました。また、卒業して終わりなのではなく、今後バレイショを見るたびに、この研究室で学んだ事を振り返ることかと思います。ちょうど去年の今頃(2019年3月)から就職活動をし、部活動の引退(10月)までアメフトを続け、さらに研究があると、精神的にも肉体的にも限界だったと思います。しかし、一番大変だったと感じたのは、卒論発表・卒論作成でした。そんな中、学生ルームで共に励んだ仲間たちが心の支えとなりました。何より忙しい中、自分の研究において、懇切丁寧にご指導いただき、拙い文章を逐一添削していただいた實友先生および保坂先生には、感謝の気持ちでいっぱいです。(池永 誠二)



お気に入りの居酒屋の大きなじゃがバター(左)・誕生日に先生からいただいたケーキ(右)(加瀬谷)

約1年半の間、私はこのバレイショ遺伝資源開発学講座の一員として過ごしてきました。振り返ってみて率直に思うのは、「この講座に所属して良かった」ということです。作物を研究対象とする研究室が様々ある中、私はイモ(を食べることが)好きなことからバレイショに特化したこの講座に惹かれ、志望させていただきました。もちろんどの研究室に所属したとしてもそれぞれ得られるものがあるとは思いますが、私の知らなかったバレイショ育種の奥深い世界で大活躍されている先生方のもと勉強させていただけたこと、そして何より、寡黙なイメージもありながら時にはじけた優しい笑顔を見せてくださる保坂先生、私たち学生の将来を考え熱心で真っすぐなメッセージをくださり、カッコよくも可愛らしくもある實友先生に出逢えたことは、今の自分に強く影響していると感じます。私は春から就職しバレイショと直接の関わりはなくなりますが、この講座に所属し自分自身で見、聞き、行い、感じ、考える中で得られたものは、これからの自分にも必ず活かされると思いますし、活かします。先生方をはじめ、技術補佐員の竹中さん、この講座を卒業された先輩、この講座の学生の皆様、そして次世代バレイショセミナーなどの場で関わらせていただいた皆様に、この場をお借りして心より感謝申し上げます。大変お世話になりました。ありがとうございました。(加瀬谷 望)

(2020年3月22日)


お便り 2020便

皆様、遅くなりましたが今年も宜しくお願い致します。

朝日

1月初旬は雪がなく砂嵐が吹いた異常な十勝でしたが、ようやく雪が降り見慣れた景色になってきたと思いきや一晩で50センチ積の大雪に見舞われ、1日中雪かき仕事で身体も心も挫けそうになりもうやめてくれと願っています。気温はマイナス20度まで下がる日はほぼなく暖冬です。日中の日差しはどんどん強くなり、日の光に敏感な私達とイモ達はこれからどんどん元気になっていく?と期待しています。

雪原

日本中のどの大学も同じ状況だと思いますが、1月は教員もあまり寝れない、学生方はもっともっと寝れない本当に大変な月です。こうならない様にと言い続けてきたつもりですが、予想通りの修羅場状況です。しかし毎年思いますが、色んなことを学ばせて頂ける学生方にとても感謝しています。まだ本年度の卒論作成の戦いは継続中ですが、何をやってきたか成果をまとめ、次の課題を明確にすることは基本の様で出来ていないことがたくさんある様に思います。役に立つのか立たないのか、その時点ではわからなくても、全ての仕事においても、心の持ち方にしても、身体の動かし方にしても、日々の生活においても、やったことをまとめ次はどうすればいいかを具体的にすることによって着実にヒトは向上していく様に思います。「緻密さに欠ける」と学生時代から今までよく怒られてきている身の上、耳の痛い事柄ですが、何事も雰囲気で乗り切らないように心がけたいです。

そして、雪かきを怠けると凍りついてどうしようもなくなるのと同じで、植物の管理も適期を逃せばどうしようもなくなります。プロとして基本的なことですが、これからも適期に管理を怠らず、条件を整え、よい環境で植物を育てるという事を大切にして研究していきたいと思います。(右の写真は温室のつらら)

今年も日本を含め世界のバレイショ界が発展していけますように、そしてそれに貢献できますように。

今年の抱負でした。

キタキツネの狩り
キタキツネの狩り
(2020年2月2日 實友)


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