バレイショ遺伝資源開発学講座

国立大学法人 帯広畜産大学
〒080-8555 北海道帯広市稲田町西2線11番地

PGEL便り(2019年)

Too short day-length! Seek daylight!

交配中今年も残すところ僅かとなりましたが、冬は始まったばかりという気持ちで、3月までのなが~い期間、寒波に負けず、吹雪に負けず、ツルツル道路に負けずに過ごさなければならない極寒十勝です。特にこの12月は午後2時で既に日が落ちてくるので1日がとても短く感じてかなしい気分になります。短日に負けず!です。

植物の方も同じ気持ちで、12月は一番元気がなく光を求めて徒長している様子です。それでも電照で我慢してきちんと花を咲かせてくれているので、交配の方は順調に進みだしています(右の写真)。2月頃まで交配を行い、それから種取りをして、春に播種という流れです。コルヒチン処理による染色体倍加も毎日学生さんがお世話をした甲斐があって、うまくいきそうな感触です。また、今年から打撲黒変に関する研究も少し始めました。育種家の皆さまに色々と教わっている最中ですが、複合的な要素が絡み合ったなんと厄介な形質なんだと嘆いています。何か新しい事を発見して皆さまに還元できればと思っています。

コルヒチン処理打撲
左はコルヒチン処理、右は打撲試験の様子

最後に、バレイショ関係者各位には今年も大変お世話になりました。来年も夢のある仕事を1歩ずつ現実化させていきたいと思います、どうぞ宜しくお願い致します。

(2019年12月11日 實友)


バレイショ研究者の集い~「産み出す」入口から「食べる」出口まで~
麦畑

一か月前までバレイショが植えられていた畑は見る見る間にコムギ畑に変わり、冬の訪れを待つのみとなった晩秋の十勝の青空の下、毎年恒例の次世代バレイショセミナーが行われました。今年は九州、四国、関西、中部、東京、北海道、全国各地から過去最大の78名の方にご参加いただき、それぞれのバレイショの知識を共有し、自分の知らないバレイショ事情を存分に知ることができたセミナーとなりました。ご参加いただきました皆様本当にありがとうございました。

次世代バレイショセミナー1次世代バレイショセミナー2

バレイショLoversの皆さまは、この2日間、夜の11時を過ぎでも、寝起きの早朝露天風呂の中でも、食事中でも、ホテルのフロントでも、トイレでも、廊下でも辺り構わず人を見つけては四六時中、バレイショトークに花を咲かせており、どんな時でも耳に入るのはすべてイモの話でした。育種も研究も開発も、基礎に近い仕事をしているほど孤独に黙々と仕事をしている時間が多く、その苦労はすぐに成果として現れるものでもなく、理解を得られない辛さが日々あるかと思いますが、バレイショ研究のホームはここにあります。互いの悩みや問題点を相談し、バレイショにアツい思いを抱いて研究している者同士がいることを心の片隅に留め、日々の業務にこれからも情熱を注いでいかれることを願っております。全国に散ってはおりますが、これからも協力し合い、応援し合い、共により良いバレイショ界を創っていく創始者となっていきたいと思います。また、来年お会いできますことを楽しみにしております。

(2019年11月11日 實友)


色づくモノ落ちるモノ、秋から冬への移り変わり

10月も半ばとなってからの更新です。
秋から冬へ
雪虫が舞い、木葉がなだれ落ち、水道凍結の心配をしなくてはいけなくなってきた十勝の晩秋です。今年の秋は10日ぐらいの短い期間な様子です。寒がりやのハクチョウやカモが上空を、食いしん坊のホオアカやモズが野原を騒がして、行く鳥、来る鳥の往来合戦をしています。

イモ掘り2種イモ消毒
北農研でのイモ掘り(左)、および来年の種イモを消毒して乾燥中(右)

イモ掘り1今月より正式に当講座へ所属が確定した新メンバー二名は、いきなりブユの大群に狙われながらの3時間手作業のイモの収穫という超過酷な作業に向き合うことになりましたが、系統が混ざらないようにイモの顔をじ~~っくり眺めながら、これは違う、これはこっちと選別しながら最後まで無事に(首や唇が腫れ上がった人もいましたが・・・)収穫作業をして頂きました。この作業をもってようやく収穫作業は終了し、これから収穫物の調査に入ります。当講座の仕事は、時には0.1μlの精密作業、時には100キロの重労働ですが、そのギャップを楽しんで頂ければと思います、どうぞ宜しく。そしていよいよ最終年度の学生さんは卒論、修論の最終章の時期に入ります。成果をきっちりした形にまとめて公表できるようにお互い精一杯取り組みたいと思います。勿論それだけでなく冬の交配もスタートしました。年中通して植物管理のサイクルには休みがないです。なので、力まず、気張らず、無駄なく、効率よく、が肝心ですね。

先週の協議会の情報によりますと今年は全道で豊作の様で、市場での値がだいぶだぶだぶしているようです。一生懸命に思いを込めて作り育てた農作物が悲しい目に合わないか少し心配しています。良いものはそれ相応の価値がつきますようにそれぞれがひと工夫できますことを願っています。研究の側および育種の側では、よい新品種が世に出ていけるように、一同取り組んでいます。それによって、生産者の選択枝が増えますように、消費者の意識が変わりますように、社会により良い循環をもたらせますように、と強い考えをもって作っています。ですが、絡み合った古い糸が解けて大きく既存の習慣や文化が変わってゆくには結構な「何か」が必要です。それを動かすために立場の違う人々と向き合い、知恵を絞り、再度植物と向き合っていかなければいけません。文化とは本来は「耕す」という意味だそうです。皆で一緒に耕していきたいです、その「何か」を求めて。

(2019年10月12日 實友)


穏やかな青天の秋空の下、どこまで続くか収穫の3苦

長芋察真っ青に澄みきった高い高い青空に、大雪山系、日高山脈が堂々と聳え、鬼百合、竜胆(リンドウ)、蝦夷萱草(エゾカンゾウ)、クサノオウ、大反魂草(オオハンゴンソウ)と夏と秋の花々が混ざり合って咲く草むらではコオロギが鳴き、その上をすっかり容貌だけは一人前になったホオアカやノビタキの幼鳥達が活発に飛び回っている、のどかな秋の十勝です。それは、それは客観的に見た自然界の一部始終ですが、何億万人の食を支えている十勝の人々の秋は決して穏やかではありません。春に植え付けたイモが10倍量(=10倍労力)になって返ってきます。朝露の降りる6時から星空輝く夜7時までどこかの畑で必ずトラクターが動いています。

今年の当講座の畑は、ミニポテト用育種の畑、無農薬栽培育種の畑、PGEL系統育種用(個体2次選抜)の畑、デンプン原料用系統のQTL解析の畑 (2箇所)、早晩性調査の畑(2箇所)と大変に大掛かりで、1系統ずつ間違わずに無事に収穫できるのか?よいデータが取れるのか?始まってはいますが、終わるまで気が落ち着きません。

仏教における3苦は「苦苦(肉体的な苦)、壊苦(悪い方へ変化する苦)、行苦(生存していること自体の苦)」ですが、イモの収穫時に体験するこの3苦の中身は、
  苦苦: 暑くて、重くて、量が多く途方も無くて、臭くて、きつくて、身体が痛くて・・・
  壊苦: そうか病が見えて、腐れがあって、不揃いで、裂開があって、収量が低くて・・・
  行苦: なんで毎年こんなしんどい作業をしているのか、意味があることをしているのか・・・・
収穫したイモ ではないかと思いますが、いかがでしょう。前日の疲れが残っている朝の倦怠感や予想外の雨に打たれた無力感が特に辛いですね。何かのトラブルで収穫できなかったときはもっと悲しいです。しかし、逆に素晴らしいものが獲れたときの喜びは、大きな期待と達成感として何十倍にもなって返ってくるのではないかと思います。育種の場合は倍率計算ではなく、0のものから1を産む仕事な故、不測の苦の集積です。しかし、きっと1になったときの喜びは計り知れません。

苦も楽も千差万別ですが、独りで感じている苦楽ではありません。上手くいかなかった事は来年に活かしましょう。辛いときは美味しいイモを食べましょう。あと1ヶ月、ともに頑張りましょう。

(2019年9月5日 實友)


ねっぱ、熱八

畑視察先日の報告会にお越し頂きました共同研究者ならびに寄附者の皆様、お忙しい中全国各地からお集まり頂き本当にありがとうございました(右は現地視察会の様子)。当日は炎天下の帯広となり避暑にもなりませんでしたが、最後までお付き合い頂き、皆様と意見交換できたことを大変光栄に思うと共に私達の講座がこれから先何を皆様に提供していけばよいのか、私達がすべき事を深く考え整理する機会になりました。14の企業団体より、基礎研究者から購買、製造、流通、開発、執行役員…等々、多種多様な職の方々が集う珍しい場となりましたが、これからもこのポテトコネクションを大切にしていきたいと思います。長期に渡る育種事業が主体ではございますが、どうぞこれからも宜しくお願い致します。限りある時間でした為に研究室や温室を紹介できませんでしたので、皆様、近くにお越しの際はいつでも気軽にお声かけください、ご案内させて頂きます。また、11月の次世代バレイショセミナーでは全国のポテト研究者が集う会となっております。ご興味あります方は是非ご参加ください。

麦稈ロール熊の出る畑
左は収穫後の麦畑。右は、現地回りの畑(熊が出没した畑)

灼熱の帯広では、7月30日以降に一気にコムギの収穫が行われ、早々とバレイショの順番がやってきました。土煙を撒き散らしながら、リーフチョッパーが走りまわり、収穫機がどんどん畑へ投入され、生産者の皆様は熱波の中畑に入ってイモの収穫を行っております。夏休みを迎えた当大学の学生さんも朝からコムギ、ダイコン、ニンジン、バレイショ、さまざまな現場へお手伝いに行っている様子です。彼ら彼女らが今、生産現場で汗水流して働くことで得るものはとても大きいと思います。将来の農業のためにも精一杯に色々な経験をしてもらいたいです。

ハーバリウムオープンキャンパス学内ではさらに若い世代向けにオープンキャンパスが行われ、当講座でも野生種のイモを掘って実際に見てもらうツアーを担当しました(右の写真)。暑い暑い日ざしの中でしたが、高校生の生徒さんたちは目を輝かせ興味を持って熱心に聴いてくれました。保護者の方々もいらっしゃってましたので、「ジャガイモはぜ~ったいに窓際に干さないでください!冷蔵庫や涼しくて暗い所で保存してください!!」と連呼しておきました。意外と知らないようでしたので、この記事を閲覧しておりますポテトLoveの皆様も一般の方とお話しする機会がありましたら呼びかけお願いします。

(2019年8月6日 實友)


花咲く畑

十勝の畑は開花期を迎え、ムギ穂は黄金色に輝き、バレイショ畑は白や薄紫の鮮やかな装飾模様となっており、そこにマメの若々しい淡緑色とビートのつやのある濃緑色、そして白樺並木の白色樹皮が共演し、1年で最も美しい光景が広がっています。しかし、青空が顔を出す機会はそれほど多くなく、日照不足による生育不良が危惧されています。肌寒い日が続き、7月というのにオイルヒーターが頑張っている朝もあり、冷凍庫のアイスキャンディーは減らない一方で、病気の心配は増えるばかりです。熱波も困りますがもう少し夏らしい天気が欲しいこの頃です。

さて当講座には、新しく二名の3年生がメンバー入りし、これから一緒にバレイショ遺伝育種学を学んでいくことになりました。自分の意思で己の道を選択することは、自信と希望を産み出します。私達はそれに値する学びを一身に捧げることが何よりの勤めです。

網室育種圃場
網室(左)と育種圃場(右)の様子

早晩性やデンプン関連の研究材料の生育調査も大忙し(左下写真:温室前)、マーカー検定など実験室の仕事も大忙しです(右下写真はマーカー検定の結果に基づいた抜き取り作業)が、1つ1つを地道にこなしてよい結果が得られるように進めていきたいと思います。

温室前抜き取り作業中

(2019年7月8日 實友)


炎天下に耐える

6月初旬のバレイショ畑
6月初旬のバレイショ畑

35度の炎天下の中、バレイショ植え付け中 十勝では5月の中旬に氷点下を記録し、朝一番にビニールハウスへ行くと見るも無残な凍傷で枯れ果てた苗達…、購入し直すことができましたが、その光景には本当に心が痛み、今でも脳裏に過ぎります。そして、5月下旬には37度の熱風と竜巻のような激しい砂嵐によりビートの苗が飛び散ってしまいました。待ちに待った雨の日、降水確率100%にもかかわらず雨が降りませんでした。植えつけ最中のすさまじい天候に悲鳴をあげて喉が炎症し声が出ませんでした(写真は35度の炎天下の中、バレイショ植え付け)。しかし、そんな事はおかまいなく乾燥に強いバレイショは砂漠の様な大地からでもしっかり芽を出しました、まさにアッパレです!!(みなさん春の砂嵐の日はマスクをしましょうね)。その後の降雨により、バレイショだけでなく、冬の寒さに耐えたコムギも、再定植されたビートも、マメもコーンも畑の作物はみな、すくすくと大きくなっています。植え付けの大波を越え、梅雨入り前の清々しい6月初旬を迎えています。これからは生育調査とDNAマーカー選抜の時期を迎えます。今年は多重式検定とSNP検出のために思い切って新しくReal-time PCR機を購入しました。今月末に納入予定ですのでこれからそれを活用して育種および研究を行っていきたいと思います!

ビートと蕗
ビートと蕗

どうか今年も病気や災害に遭わずに無事に収穫期を迎えられますように☆
(2019年6月3日 實友)


花咲く日=3/365日、葉もない枯れ木期間=240/365日、それでも桜を植えるのか。

鹿追の桜
春の山の風景

エンゴサクとエゾリス
校内に咲くキタエンゴサクとエゾリス

冬の寒波が尾を引き春の訪れを遅らせておりましたが、芝も緑を吹き返し、木々の新芽が大きくなり、と思いきや全国で1番暑い29℃の日を迎え、一瞬で儚い十勝の春は去りました。それでも春は尊いものです。
桜の花びらが舞い散ってゆくと伴に連休が終わり、新年号にもなり、植え付けも始まり、さらに当講座に新しい研究補助員さんが増え、とても新鮮な気持ちで5月を迎えています。また、来週には当講座所属の学生さんが約1年間、アメリカのウィスコンシン州立大学へ留学のため旅立ちます。現地でバレイショ研究に携わるとともに、バレイショ育種から一般の生産体系も見に行けるようでとても素晴らしい経験となることと思います。現地で多くの事を学び、大きなトラブルなく帰ってこられることを祈って送り出してきます。

植え付けオオルリ
温室前の畑へイモ植え付けの様子(左)、GW中、学内に遊びに来たオオルリ(右)

まだまだ植え付けシーズン真っ最中で、実生の播種と温室前の畝に植えつけを行っただけで、あと3箇所の大きな仕事がありソワソワしますが、作物を扱う仕事に従事する人々は全員同じ気持ちのこの季節なはずです。予定通りに行かない事もありますが、それでも1つ1つの仕事を着実にこなし、この大変な一ヶ月を皆と一緒に乗り越えたいと思います。

(2019年5月8日 實友)


始、始、始、四月

新学期が始まりました。本州では桜が咲き乱れている頃かと思いますが、十勝では桜吹雪ではなく、本物の吹雪が新入生を歓迎しています。今日(4月3日)の朝は濃霧で視界不良甚だしく、車を運転しているとそのまま霧の中へ吸い込まれて天の国への上り坂へと続いてしまうのではないかと肝が縮む恐怖に駆られました。が、一歩外へ踏み出すと幻想的な白銀の世界に酔いしれ立ち尽くすばかりでした。

雪化粧
最後の雪化粧

さて、当講座のみなさんは温室で交配に取り組んでいますが、花が咲いたり、咲かなかったり、すぐにイモをつけたり、交配しても実をつけなかったり、実をつけても種がなかったり…、色々な性格の難しい植物達を世話していますが、刻一刻と成長は進んでおり、交配のピークは泣いても笑っても後一ヶ月です。その間、彼らと心を通わせて取り組みたいと思います。また、PVYの接種試験も培養棚の方で行っています。病気に感染して欲しくない時には罹るのに、感染したい時にはなかなか罹らないものです。上手くいく事を祈りながら毎日お世話をしています。全ての始まりの4月で知らずのうちに精神力を使いますが、体力を使う5月が待っていますので、澄み切った春の空とその中の新しい訪れに心を和らがせながら日々の業務をこなしていきたいと思います。

PVY花盛り
PVY接種試験中(左)、花盛りの温室(右)

(2019年4月3日 實友)


雪解けと共に

白鳥1白鳥2

白鳥3季節に従って仕事をしている私達は、冬が来て嫌だと思うことも、春が来て嬉しいと感じることも特に無く、冬があるから春がくるものであって、渡り鳥が往来を繰り返す様に、自然を自然のままに受け止め、その時期にやるべきことを粛々と年々行っております。が、季節の代わり目はなんとなく「遂に来ましたね」と心の奥で囁くものを感じます。 十勝では早々に雪解けが進み、同時にPM2.5が上空を覆いつくし、道路や畑に大量のゴミが露出し・・・(いやいやそんな悲惨なことだけではありません)、それと共に絶命したかと思われたムギが息を吹き返しました。さすがは秋撒き小麦です。雪もまともに被っていないのにここまでの劇的な寒波を良く耐え抜きました、天晴れです!品種改良した方々も、生産者の方々もさすがです!!これからの品種はこうやって環境変動に強くなければ品種として成り立たないです、イモも負けてられないです。にしても、課題だらけ、やることだらけで毎日パニック注意報!?誰かバレイショの研究を一緒にしませんか??!

現在、当温室は完全に春モードに切り替わり、花盛り、伸び盛りの植物で溢れており目が離せない状態です。野生種、栽培種ともによりどり緑で、これだけたくさんの種が一度に見られる今の温室は世界屈指のジャガイモ植物園みたいになっています。何の研究材料かをざっと申し上げますと、雑種強勢と自殖系統の仕事、花粉稔性の仕事、グリコアルカロイドの仕事、PVYの仕事、早晩性の仕事などです。作業を始めるとあっという間に数時間が経過し、夕暮れを迎えてしまいますが、これも畑仕事に入る前の大きな仕事です!

温室の中

(2019年3月3日 實友)


寒波と春の日差しのコラボレーション

2月も半ばになってしまいましたが、お便りの更新です。
シベリア寒気団にすっぽり覆われた北海道ですが、肌身に突き刺さるような寒さは十勝へ毎年やってくるのでいつもと同程度の気がします。勿論マイナス25度で露天風呂に入ると髪の毛がヤマアラシのようにツンツンに固まり、手すりを持ってしまったなら手が離れなくなりますが、それもまた良しです。雪もほどほどに降りましたし、昨年堀り残したイモが野良イモにならないように凍りつく寒さもまた必要です(部屋の中は20度以上ありますので快適です)。

さて、寒さは和らぎませんが日の日差しがとても強くなり、温室では交配シーズンに突入しました。暖房用ボイラーもしっかりと働いています。これから4月までは1年で最も交配に最適な時期です。現在4名分の植物体が植えられているので、これからは誰かがいつも交配している様子になりそうです。腰が痛くならないように交配用チェアーも購入してやる気全開です!データに穴が空かないように、種がなくて悔やまないように、心して取り組みたいと思います(写真は交配チェアーとS. stoloniferumに着いた白い実)。

交配チェアー白い実

当大学の学生方は、卒論、修論発表、期末テスト期間が終わり、そろそろ春休みですが、それぞれアルバイトや就職活動、部活動や卒業旅行など色々なことが待ち受けている様子でとても忙しそうにしています。おもいきり笑って、怒って、泣いて、喜んで、悔やんで、色んな経験をして社会人になってもらえたらと、その時期が去ってしまった我々は影で想っています。でも同時に私達の方も学生方からたくさんの事を日々学ばせて頂いています。どんな立場であっても人と人が関れば、互いから学び合う場となりますね。人と関ることは大変に難しいことですが、その分、一生懸命考える機会を得ることが出来るので有り難く感じます。

植物と人との関係であっても私達は学び合っているのでしょうか?確かに、声をかけてはくれませんが、日々途方も無いくらいに勉強させて頂いていますし、一方で私達は彼らを誕生させ、育て、次の世代を創っていますので、一応よい関係を築けていると思いたいです。命あるものが繋がれば互いに得るものがある、と結論付けたいです。
また、昨年の11月下旬に撒いた小さな種から弱々しい芽が出て、ようやく1つの植物になりつつある苗を見ていると命の神秘を感じますし、この世に生命を産み出すという仕事をとても誇りに思います。農業、農学に関る皆様もそう感じているのでしょうか。何を想って植物と付き合うのか是非教えて頂きたいところです。

(2019年2月13日 實友)


2019年、新年のご挨拶

日の出
十勝沖の初日の出

明けましておめでとうございます。
バレイショ関係者の皆様ならびに当講座とご縁ある皆様、今年もどうぞ宜しくお願い致します。

タンチョウ 日本各地で猛吹雪のニュースが年末年始と相次ぐ中、十勝地方だけは日高山脈と大雪山系のお不動様御方々の強靭な守りにより、毎日晴天が続いております。毎日朝日を拝み、気持ちも明るくなり、とても有難いのです、本当は。ところが、辺りを見渡すと畑を覆っていた雪が消え、土がむき出しになりマイナス20度の寒波に晒されています。ハクチョウやタンチョウは喜んで畑で餌を探していますが、よく見ると、大きな鳥君達、そこはムギ畑ですよ!露出した秋播きコムギが…捕食されてしまわないか、完全凍結してしまわないか、心配でたまりません。雪が多過ぎるのも、少な過ぎるのも問題です。調度いい塩梅にしてくださいとお願いしたいところが本心ですが、我々は煮ても焼いても凍っても研究者なので、お願いする暇があったら、問題に対する根本的な改善策を模索するのが筋であります。これからも頭を抱えて努力させて頂きます。(右上の写真は、牛に立ち向かう勇猛な丹頂鶴)

まだ十勝に移り住んで10年弱ですが、夏も冬も各年の変動がなんとも大きいことだろうかと肌身で感じます。また、ここ数年間で越冬する鳥の種類も、飛来する時期も変化している様子で、動物達の方は既に環境変化に適応しようと命がけで挑んでいるように感じます。適応能力とはどの部分でどうやって感じているのか(あの丹頂鶴の赤い頭の不気味なヒダヒダ突起がやはり鍵なのか?!)。種の進化とはゆっくり何万年もかけて行われてきたと考えがちですが、実際は素早く対応できるように遺伝子に刻まれており、それらが環境の変化に超敏感に反応し、呼応し合っているのではないかと思わざるを得ません。
“adaptability”は紛れも無く動植物が生きていく上で最も重要な要素の1つです。
ヒトの手によって作り出してしまった栽培作物にそれを与えるのもまたヒトの手ですが、人間の目が節穴だらけで、植物達がきちんと反応を示してくれているはずなのに、そのシグナルを見落としてばかりいるのではないかと思います。ヒトの手は工夫するという力を持ち、ヒトの目は改良するという目標を立てることができるはずです。どうかしっかり目標を見据えて、今年もパズルの1ピースが1つずつ填まっていきますように。

花盛り芽生え
左は今花盛りの温室、右は芽生え
(2019年1月7日 實友)