グローバリゼーションにより人や物資が地球規模で移動するようになるにつれ、感染症もまた容易に国境を越え急激な拡大をみせています。我が国では地震や台風などの災害に対する防災意識は高いものの、感染症に対する"災害" としての認識は低いです。ヒトに感染する感染症の約6割が人獣共通感染症で、このうち約3割がヒトからヒトへの伝搬が可能とされ、公衆衛生上特に問題となっています。また、SARSや高病原性鳥インフルエンザなどの新たな感染症の勃発や、さらに、天然痘、炭疽など人類が制圧したと思われた感染症が、今バイオテロという新たな脅威として我々の社会に緊急の課題を投げかけています。これら新興・再興感染症の実に7割が人獣共通感染症です。
人獣共通感染症では感染源となる動物が野生動物や、産業動物、あるいは伴侶動物など様々な生態系を持つことや、また同じ病原体でも宿主により症状に差異があることなど、対策を講じるにあたっては個々の疾患についての疫学的情報、病原体および宿主の生態、症状について把握するだけでなく、様々な関係者の利害を調整する必要も生じるなど、諸専門領域の連携が必要です。特に医学と獣医学の連携の重要性は指摘されているにも関わらず、実際は解離したものになっているのが現状です。
本セルユニットでは、人獣共通感染症をこれまでの獣医・畜産的アプローチに留まらず、医学および社会学的側面から包括的に捉え、単なるAnimal healthではなくpublic healthを投影した“One health (one medicine, biosecurity)”という大きな枠組みとして理解し、動物のみならずヒトでの感染症の知識を有し、バイオテロや新興感染症による"災害時"に迅速に対応できる人獣共通感染症対策専門家の養成カリキュラムを構築します。
Most of the emerging infectious diseases, including bioterrorism agents, are zoonoses. Since zoonoses can infect both animals and humans, a unified human and veterinary and social approach to zoonosis in public health advances both animal and human health and biosecurity.