途上国には苛酷な気候や疾病媒介昆虫などの環境に順応して生き延びてきた在来種がいます。外来種の導入が始まると在来種は絶滅の危機に陥りやすくなります。稀少な在来種が消滅する前に、その特徴や有効性を十分に調査する必要があります。在来種の遺伝的研究については、すでにそのジーンバンクが利用可能になりつつあります。しかし、感染症に対する抵抗性や感染症発生の機序において在来種とホルスタイン等の外来種にどのような違いかあるかなどは全く未解明です。これを解明するためには、在来種を対象に感染症の定点観測や血液採取などのフィールド作業を実施し、家畜の行動やホルモン分析のデータを積極的に利用する「動物共進化疫学(ACE)」を構築する必要があります。在来種の抵抗性などの機序がわかれば、ワクチンや薬物を使わない疾病コントロール対策が可能となります。それは政府資金が不足する途上国では重要であり、また環境を重視する先進国においても有効な感染症防止策です。ACEユニットは、畜産生化学(桑山)、獣医疫学(門平)、および熱帯感染症診断学(井上)の三領域が連携して大学院教育研究を推進し、アジア・アフリカ途上国における動物疫学フィールド作業を展開して、在来家畜種の有用性解明を目的に活動します。大学院では本学の家畜を用いる動物実験を実施し、栄養生理学および生産性に影響するホルモンの基礎研究を行います。現地ではスタッフと協力してフィールド作業に参加し、行動観察や試料採取を行います。現地で集めた試料を分析し、疾病の発生データと生産性の関係を疫学的に研究します。海外での活動はケニア・ロルダイガ研究所を主なフィールド拠点とします。また、東アフリカ、ミャンマー、カンボジア、ベトナム、フィリピンおよび韓国でそれぞれ活躍している畜産大学出身の帰国留学生と協力し、現地での教育研究を展開します。
ACE unit seeks to identify various types of factor related to animal productivity, disease resistance and transmission at animal level using integrated methodologies combined with epidemiology, biochemistry and molecular microbiology.