<1回目講義>分子生物学 (2004.10.4)
Q.分子生物学とは?
分子レベルの視点から生命現象を理解しようとする学問---生化学、分子生物学
Q.生命とは何か? 生きているとはどういうことか?科学の命題として
微生物、哺乳類など
Q.生命を構成しているもの(物質)は何か?その構成単位は何か?
タンパク質、水、脂質、カルシウム(無機イオン)、糖(炭水化物)、核酸(DNA,RNA)、細胞
Q.その含量は?
水 70%
タンパク質 15〜16%
脂質 1%
カルシウム(無機イオン) 1%
糖(炭水化物) 2〜3%
核酸(DNA,RNA) 7〜8%
Q.生き物の分子と生き物ではない分子の違いは?
1.分子が特定の役割(機能)を担う
生体分子の役割
糖----エネルギー源
脂質----エネルギー源
タンパク質----細胞を造る(チューブリンなど)、酵素
核酸----情報
水----溶かしている
Q.細胞の膜は何から出来ている?
タンパク質と脂質がほぼ等量
※ 巨大分子(細胞の25%前後)が生体内のいろいろな機能を持っている。その巨大分子の化学的な基本構造は?
重合体の鎖の端に縮合反応によって、単量体が結合して伸びてゆく。水分子が取れる。糖、アミノ酸、ヌクレオチドにおいて、同じ縮合反応が起きている。この反応の優れている点は、相互的である点で、簡単に合成したり分解したり出来る点で優れている。グリコシド結合、ペプチド結合、ホスホジエステル結合である。
2.分子同士が相互関係を結ぶ
共有結合のほかに、イオン結合、分子間結合、ファンデアワールス結合、疎水結合などにより社会的な相互関係を結んでいる。リボゾームの例を説明。
<2回目講義>(2004.10.18)タンパク質の構造と機能
Q タンパク質が多様な役割を果たせるのは何故か?
さまざまな三次元構造を取れるから。
タンパク質の形と構造
Q タンパク質の形、構造は何によって決まるか?
タンパク質の形は、アミノ酸配列によって決まる。タンパク質は、ポリペプチド骨格に側鎖が結合した構造をしている。図5-2、図5-3
構造の形成には、4種類の非共有結合;イオン結合、水素結合、ファン・デル・ワールス力、疎水結合図5-4、図5-5が重要な働きをしている。
タンパク質はエネルギーレベル最低の立体構造(コンフォメーション)を取るように折りたたまれて三次構造を作る。変性と再生、分子シャペロン
タンパク質はさまざまな複雑な構造を取るが、共通の構造モチーフがある。
αヘリックスとβシートは、いろいろなタンパク質にみられる折りたたみパターンである。
タンパク質の構造はいくつかの階層に分けられる。図5-9
タンパク質ドメインと呼ばれるアミノ酸50-350個から成る他から独立した安定な折りたたみ構造で、機能を持つ部分が複数(2つ程度)ある。図5-12
N個のアミノ酸からなるポリペプチドの種類は、20n種類あるが、理論的に可能なポリペプチド鎖のうち有用なものは限られる。アミノ酸50〜2000個の範囲。
タンパク質はファミリーに分類できる。図5-14
大型タンパク質分子の多くは複数のポリペプチド鎖からなる。ホモダイマー、2つのヘテロダイマーが会合したタンパク質
タンパク質の集合で繊維やシート、球ができる。図5-17
らせんは生体物質に共通の構造モチーフである。
長い繊維状のタンパク質。コラーゲンやエラスチン
細胞外のタンパク質は共有結合による架橋で安定化している。ジスルフィド結合。
タンパク質の働く仕組み
タンパク質は他の分子と結合することで、触媒作用、シグナル伝達、モーター作用を持つことができる。結合は高い特異性がある。リガンドと結合部位の考え方。図5-24
抗体の結合は特に融通性に富む。抗原を結合するループ。ループの長さ、アミノ酸組成の違いから抗原を識別している。
タンパク質に強く結合している小型分子は特別な機能を付加する。ロドプシンは分子内にレチナールを共有結合している。ヘモグロビンは分子内に鉄を持っている。
※(結合の強さは平行定数によって求める。)
酵素は強力でかつきわめて特異性の高い触媒である。
リゾチームを例にした酵素の働き方。
VmaxとKmで酵素の性能を測ることができる。
酵素の触媒活性は調節を受けている。フィードバック阻害。
1.アロステリック酵素は、相互に作用しあう2つの結合部位(基質結合部位と調節分子結合部位)があり、調節部位にリガンドが結合することでコンフォメーション変化を起して、活性を変化させることができる。
2.リン酸化、脱リン酸化により、タンパク質のコンフォメーション変化を起こして活性を変化させることができる。
3.GTP結合タンパク質は、自己分解により大きなコンフォメーション変化を起こす。
4.モータータンパク質は、ATPの結合、加水分解、遊離により細胞内で大きな動きを生み出す。図5-40
タンパク質はタンパク装置として機能する大型複合体を作る。その時の構造変化にATPの結合、加水分解、遊離を利用している。図5-41
3回目(2004.10.25)
タンパク質はアミノ酸が順に結合したものだが、その順を決めている情報はDNAに書き込まれている。
セントラルドグマの考え方と逆転写酵素の発見
DNAの構造と機能(6章)
遺伝子はDNA(deoxyribonucleic acid)からできている。
染色体はDNAとタンパク質からできている。
DNA分子は2本の相補的なヌクレオチド鎖でできている。図6-4、図6-5DNA二重らせん構造
DNAの構造体自体が遺伝のしくみを決めている。図6-8 タンパク情報、調節領域
(ゲノム:ある生物のDNAが持つ全情報をまとめてその生物のゲノムと呼ぶ。)
真核生物の染色体構造(8章)
真核生物のDNAは染色体に詰め込まれている。図8-2、図8-3人の染色体バンドパターン
細胞周期の段階によって染色体は異なった状態で存在する。図8-4 細胞周期の簡単な図
間期の染色体は核内に整然と配置されている。図8-14間期の核 図8-15核小体
図8-5 間期と有糸分裂期の染色体 ある特定のDNAの配列が染色体を確実に効率よく複製させる。基本的な3種類の塩基配列:DNA複製起点、セントロメア(複製して2つになった染色体を細胞分裂のときに娘細胞へ引っ張らせる働きに関与。動原体タンパク複合体が染色体を紡錘体に結合する。)、テロメア(染色体の両端に存在し、反復配列が存在)
ヌクレオソーム(クロマチンを小さくたたむ基本単位)はクロマチンの基本単位である。
図8-8 間期のクロマチン(染色体構成するDNAとタンパク質複合体)の電子顕微鏡写真
染色体では、DNAは何段階にも折りたたまれている。 図8-9ヌクレオソームの実体 図8-10クロマチンの凝縮
(間期の染色体には凝縮したクロマチンと凝縮どの低いクロマチンが共存する。)
(遺伝子発現に及ぼす位置効果から、間期クロマチンの凝縮状態の違いがわかる。)
細胞分裂 No.1(17章、16章、18章)
細胞周期の概要
細胞周期には2種類の装置が必要である。
1.細胞周期装置 cell-cycle
machinery
2.細胞周期調節系 cell-cycle
control system
1.細胞周期装置の概要
図17-1細胞周期、染色体の複製と細胞の成長、染色体の分離、細胞分裂
図17-2細菌の細胞分裂
表17-1 図17-3細胞周期の長さ、M期は有糸分裂;核の分裂と細胞質分裂;細胞の分裂からなる。それ以外を間期という。
真核細胞の細胞周期は4つの時期に分けられる。図17-4 G1期、S期、G2期、M期、Sはsynthesis(合成)、Gはgap(隙間)Mはmitosis(有糸分裂)
有糸分裂と細胞質分裂は細胞骨格の働きである。
細胞骨格とは?(16章)
細胞内に秩序正しく配列したり、細胞が運動したりするのに働いているタンパク質繊維、微小管、アクチンフィラメントなど
染色体の凝宿に続いて、2種類の細胞骨格が形成される。1つは紡錘体(微小管)で、G2後期に作られる。もう1つは、収縮環(アクチンフィラメントとミオシンフィラメント、動物細胞に特有)でM期に形成される。図17-5
いくつかの細胞器官は有糸分裂により分散する。
細胞周期の調節(18章)
2.細胞周期調節系の概要(細胞周期の過程は決まった順序で起こる)
図18-2細胞周期の調節が必要である。適切な時期に活性化して、その過程が完了した所で不活性化する。
図18-3 2つのチェックポイントが存在する。
G1チェックポイント、G2チェックポイント
それに関係するタンパク質は、サイクリン-Cdk(サイクリン依存性キナーゼ)複合体、
MPF(M期促進因子、M-phase promoting
factor)はサイクリン-Cdkの1つ。図18-4
Cdk(サイクリン依存性キナーゼ)はリン酸化と脱リン酸化によって調節されているタンパク質リン酸化を触媒する酵素である。図18-9、
図18-10 正のフィードバックコントロールによる活性化促進
図18-12 サイクリンの分解によるCdkの調節
S期とM期を起動する2種類のサイクリン−Cdk複合体。活性化にはサイクリンとの結合、リン酸化と脱リン酸化が必要である。また、不活性化はサイクリンの分解による。
4回目(2004.11.1)
細胞分裂(17章)パート2
(復習)
真核細胞の細胞周期は4つの時期に分けられる。G1→S→G2(間期)→M(M期)→
M期は、有糸分裂(核の分裂)と細胞質分裂があり、細胞骨格の働きで起こる。
いくつかの細胞器官は有糸分裂期に分散する。
1.有糸分裂についてp550 細胞周期の装置
細胞分裂の概要(パネル17-1)
有糸分裂は伝統的に5段階に分けられている。前期、前中期、中期、後期、終期
・間期について 細胞が大きくなる。染色体DNAの複製、中心体の複製 p256
p518 図16-7中間経フィラメント;核ラミン、分解と再生、タンパク質キナーゼによるラミンのリン酸化と脱リン酸化により制御。
・前期について p552
図17-6 姉妹染色分隊の分離;表面に存在するタンパク質どうしの相互作用により並んで結合している。紡錘体の集合は前期に始まる
紡錘体は、微小管からできる。図17-7
微小管(細胞骨格)の役割と重要性p518
構造・特徴とその役割
構造 p520 図16-9微小管の構造 チューブリン二量体、プラス鎖とマイナス鎖
微小管は両端の構造が異なる中空の管である。極性を持つ。微小管は会合と解離の均衡の上に維持されている。
中心体 図16-10中心体で起こるチューブリンの重合、γ-チューブリン環
動物細胞では中心体が微小管形成の中心となる。伸長する微小管は動的不安定性を示す。
動的不安定性:チューブリン分子自体が持つGTP加水分解能に基づいている。図16-12
微小管は細胞内の秩序を保つ。図16-13微小管の安定化により細胞に極性ができる。
前中期には染色体が紡錘体に付着する。図17-9動原体と微小管
中期には染色体が紡錘体の赤道面に並ぶ。図17-10 3種類の微小管、図17-11
娘染色体は後期に分離する。図17-13後期Aと後期B
終期に核膜が再生される。図17-14核膜の分散と再形成
細胞の他の成分、細胞内小器官の移動は? p526
モータータンパクが細胞内輸送を行う。モータータンパク質;キネシンとダイニン、球状頭部にATP加水分解活性(ATPアーゼ)により、構造変化を起こして微小管上を動く。ダイニンはマイナス側へ、キネシンはプラス側へ動く。図16-16
細胞器官は微小管に沿って動く。図16-17
2.細胞質分裂について
紡錘体が細胞質分裂の起こる位置を決める。分裂溝
動物細胞の収縮環はアクチンとミオシンでできている。図17-16収縮環
植物細胞の細胞質分裂では新たな細胞壁が形成される。図17-18隔膜形成体による。
減数分裂
減数分裂の際には相同な染色体が対合する。交差をする。並んで分離する。図17-21
減数分裂では、細胞分裂が1回ではなく2回起こる。図17-23比較
体細胞分裂と減数分裂
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