細胞生物学

(食料生産科学科 小嶋担当)

細胞生物学 
2003年度(講義キーワード)
シグナル伝達経路、GTP結合タンパク質、チロシンキナーゼ、MAPキナーゼ、イノシトールリン脂質、転写制御因子、増殖因子受容体(チロシンキナーゼ)、リン酸化チロシンに結合するアダプター分子

(学生への注意)
A.各授業の時までに事前に調べレポートにする。
B.授業ノートを取る。
C.授業を聞いて興味を持った事、知らなかった事などを調べてレポートにする。
以下の各項目110についてレポートを作成し、1114日(金曜日12時まで、総合研究棟III3階307室前)までにファイルとしてまとめて提出する。未提出者は小嶋分(持ち点35)の試験を受けられない。出席は8割以上必要である。
教科書、参考書:Essential 細胞生物学 南光堂、第3版 図説生化学 丸善、細胞の分子生物学(第3版)教育社、など

小嶋担当分のテスト範囲 授業で行った所と課題レポートが出題範囲です。
1.
Gタンパク質受容体を経由するシグナル伝達について説明せよ。
2.
酵素連結型受容体を経由するシグナル伝達について説明せよ。
3.
イノシトールリン脂質などを介するシグナル伝達について説明せよ。
4.
生命現象とシグナル伝達について、例を上げて説明せよ。
5.
 カルシウムイオンによる細胞調節機能について説明せよ。
6.
細胞の情報伝達機構について説明せよ。特にホルモン作用、神経伝達機構、オータコイドについて生化学的な共通点を中心に述べよ。
7.
生体膜の構造と機能について説明せよ。また、膜輸送の概要とNaCaATPaseによる能動輸送での生体機能について説明せよ。
8.
細胞の光障害、低温傷害、薬物障害とその防御機構について説明せよ。
.細胞の酸素障害を中心にして、老化機構について説明せよ。

細胞生物学試験(小嶋担当問題)  学籍番号      氏名         2004..17

問題:小嶋担当分の授業内容および課題レポートの中から、自分で興味を持った問題を1問作り、それぞれに答えなさい。また、解答にはキーワードを12個以上示し、それに下線を引き、キーワードの説明も加えること。(配点 35点)

解答:


2004年細胞生物学(小嶋分担分)

1.細胞の基礎、細胞が食物からエネルギーを得るしくみ(1章、2章、4章)
2.ミトコンドリアや葉緑体におけるエネルギー生成(13章)
3.膜の構造、細胞内区画と細胞内輸送(11章、14章)
4.膜を通した輸送と細胞の情報伝達(12章、15章)
5.細胞の情報伝達(15章)

評価方法:
 ・出席点(5点)、
 ・レポート点(15点);取り組み、調べてまとめる、自分で消化している、授業を理解してまとめている、読みやすい、図示しているなどを総合して5段階で評価する。
 ・試験(15点);授業とレポートの内容を総合的に見る内容です。細胞は栄養や情報を外部から受け取り生きていますが、それら外からのものに対してどのように対応するのかなどは重要なポイントですよね。

2004.10月(食料生産科学科 小嶋担当)http://www.obihiro.ac.jp/~kojima/

細胞生物学 教科書、参考書:Essential 細胞生物学 南光堂、第3版 図説生化学 丸善、細胞の分子生物学(第3版)教育社、ワトソン・組換えDNAの分子生物学 丸善など
(講義内容)(括弧内は細胞生物学の章を示している)
1.(10/ 5)細胞が食物からエネルギーを得るしくみ(1、2、4章)
2.(10/12)ミトコンドリアや葉緑体におけるエネルギー生成(4、13章)
3.(10/19)膜の構造と膜を通した輸送および細胞内輸送(11、12、14章)
4.(10/26)細胞の情報伝達(15章)
5.(11/ 2)細胞のシグナル応答(15章)
(学生への注意)A.各授業の時までに事前に調べレポートにする。B.授業ノートを取る。C.授業を聞いて興味を持った事、知らなかった事などを調べてレポートにする。
また、以下の各項目1〜12についてレポートを作成し、11月29日(月曜日13時までに総合研究棟III3階307室前)までファイルとしてまとめて提出する。未提出者は小嶋分(持ち点35点)の試験を受けられない。出席は8割以上必要である。

課題レポート
1.細胞の基礎知識を述べよ。
2.細胞が食物からエネルギーを得るしくみについて説明せよ。
3.ミトコンドリアや葉緑体におけるエネルギー生成を説明せよ。
4.生体膜の構造と機能について説明せよ。
5.膜輸送の概要とNa,Ca‐ATPaseによる能動輸送での生体機能と細胞内輸送について説明せよ。
6.細胞におけるシグナル伝達の概要について説明せよ。
7.Gタンパク質受容体、酵素連結型受容体、イノシトールリン脂質などを介するシグナル伝達について説明せよ。
8.生命現象とシグナル伝達について、例を上げて説明せよ。
9.カルシウムイオンによる細胞調節機能について説明せよ。
10.細胞の情報伝達機構としてのホルモン作用、神経伝達機構、オータコイドについて生化学的な共通点を中心に述べよ。
11.細胞の光障害、低温傷害、薬物障害とその防御機構について説明せよ。
12.細胞の酸素障害を中心にして、老化機構について説明せよ。
(講義キーワード)シグナル伝達経路、GTP結合タンパク質、チロシンキナーゼ、MAPキナーゼ、イノシトールリン脂質、転写制御因子、増殖因子受容体(チロシンキナーゼ)、リン酸化チロシンに結合するアダプター分子


 講義概要レジメ

1回目 細胞生物学(2004.10.5)1章、4章
細胞の基礎:食物からエネルギーを得るしくみ
細胞生物学とは、生命のしくみ、生命とは何かを細胞のレベルで考える、検討する学問
生命あるものは細胞cellでできている。---細胞を「見る。」
方法としては、肉眼0.2mm、光学顕微鏡0.2μm、電子顕微鏡0.2nm (それぞれ解像度の限界)
それぞれの顕微鏡の構造としくみについて説明、p4〜5
単位について確認する。m、μ、n
顕微鏡で見た細胞
光学顕微鏡の発明は細胞に発見につながった。
細胞や細胞器官、さらに分子までが顕微鏡で見える
真核細胞
核は細胞の情報貯蔵庫である
ミトコンドリアは食物からエネルギーを作り出し細胞の活動を支える
葉緑体は日光のエネルギーを捕らえる
細胞内膜が異なる機能を持つ細胞内区画をつくり出す
細胞質ゾルは大小さまざまの分子を含む濃い水性ゲルである
細胞骨格は細胞の動きにかかわっている
細胞の統一性と多様性
細胞は見かけも機能もはなはだしく変化に富んでいる
細胞はみな同じ化学的基礎をもつ
我々の見る細胞は同じ祖先から進化したと思われる
細菌は最も小さく最も簡単な細胞である
分子生物学は大腸菌に注目した
真核生物への進化の中間段階を示す生物、Giardia
酵母は簡単な真核細胞である
単細胞生物といっても大きく複雑で、獰猛なものもいる  原生動物
シロイヌナズナは30万種のなかからモデル植物として選ばれた
動物界はハエと線虫とマウスとヒトが代表している
多細胞生物では1つの体を構成する細胞でも大きく異なる

4章 細胞が食物からエネルギーを得るしくみ)
糖と脂肪の分解によるエネルギー材料の利用
食物分子は3段階で分解され、ATPを生じる。
解糖はATP生成の中心的経路である
発酵では酵素なしでATPが生産できる。
解糖を見ると、酸化とエネルギー貯蔵を酸素が共役させるしくみがわかる。
糖と脂肪はミトコンドリアでアセチルCoAに分解される
クエン酸回路では、アセチル基をCO2に酸化してNADHをつくる。
ATPの合成はほとんどが電子伝達によって駆動される
食物の貯蔵と利
生物は食物分子を特別な貯蔵庫に貯蔵する
多くの生合性経路は解糖経路かクエン酸回路を出発点とする。
代謝は整然と制御されている。

細胞のしくみと内部構造、その役割
細胞の構造:ミトコンドリア、核、小胞体、リボゾーム、ゴルジ体、リソソーム、ペルオキシソーム、葉緑体
それらの役割:エネルギー生成、DNA情報の保持、タンパク質生成、タンパク質の修飾(糖をつける、切断するなど)、不用物の消化、侵入物の分解、光合成による有機物生成
細胞の多様性と共通性:いろいろな細胞には、特殊性と共通性がある。

エネルギー生産方法についての概要:p109
タンパク質、脂質、糖は、生体内代謝により、ピルビン酸、アセチルCoA、クエン酸回路、ATP.(アデノシントリリン酸)、NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)、となる。
葉緑体は、チラコイドとグラナからなり、成熟したものでは、でんぷん粒を貯めている。未熟のダイズ、枝豆は未熟のうちはデンプンを貯めているので美味しいが、次第に他の糖に換えるのでうまみが低下する。
植物は、光合成で糖を作り、それを使ってミトコンドリアでATPを作っている。動物は植物が作った糖、脂肪を利用して生きている。
糖はエネルギーとしてだけでなく、いろいろなアミノ酸、脂質などに換えられる。糖から脂質やたんぱく質に変換されている。


2回目(2004.10.12
細胞のエネルギー生産−細胞質とミトコンドリアとクロロプラスト 13ミトコンドリアと葉緑体における)生物のエネルギー生成に関する基礎
細胞はそのエネルギーの大半を膜に配置された形から得ている。
P409 図13-3生物のエネルギー獲得  化学浸透共役(chemiosmotic coupling)
1.電子伝達系(electron-transport chain)水から得られたプロトン(H+)が輸送され、膜をはさんだイオンの勾配がエネルギーの貯蔵形態となる。
2.H+がATP合成酵素ATP synthase タンパク質を通って電気化学的勾配に従って移動し、ATPを合成する。

プロトン勾配の形成と利用について
(ミトコンドリア、クロロプラスト、細菌の場合など)
ミトコンドリアとクロロプラストの構造の違い
p432 図13-28 比較 ミトコンドリアp412 クロロプラストp431
ミトコンドリアとクロロプラストの生理機能の違い
ミトコンドリア---有機化合物を代謝してNADHを生産し、ATPを大量に生産する場
クロロプラスト---光エネルギーを使って、ATPNADPHを生産し、有機化合物を生産する場

2-1.細胞の運動や分裂・維持にはエネルギーが必要である。
細胞運動にはエネルギーと酵素が必要である。生体内反応は共役(カップリング)している。発エルゴン反応と吸エルゴン反応。ATPの関与。

2-2.エネルギー獲得の概要
食べ物からエネルギーを得る。人の血中には80100mg/mlのブドウ糖が存在する(血糖値)。グリコーゲンとして貯蔵。細胞に取り込まれたブドウ糖は、@解糖系(glycolysis)ATCA回路(クレブス回路)B電子伝達系と酸化的リン酸化系を経て、二酸化炭素と水およびエネルギーとなる。

3.サイトゾールで解糖系 
酸素は不用で細胞質にある共通の経路。基質レベルのリン酸化substrate-lebel phosphorylation)

4.ミトコンドリア内で効率的なエネルギー生産
 1)TCA回路
 2)酸化的リン酸化

ミトコンドリアと酸化的リン酸化
ミトコンドリアには膜で囲まれた区画が2つある。高エネルギー電子はクエン酸回路で作り出される。電子はミトコンドリア内膜にある一連のタンパク質を経て運ばれる。電子伝達により膜をはさんだプロトン勾配が出来る。プロトン勾配はATP合成を駆動する。ミトコンドリア内膜を通す共役輸送は電気化学的プロトン勾配によって駆動される。細胞のATPの大半はプロトン勾配によってつくられる。ミトコンドリアでのすばやいADPからATPへの変換のおかげで、細胞内のATPADP比は高い値を維持している。

電子伝達系とプロトンのくみ出し
プロトンは電子伝達により容易に移動する。酸化還元電位は電子に対する親和性を示している。電子伝達により大量のエネルギーが放出されている。タンパク質に強く結合している金属が多様な電子伝達体として働く。3種類の呼吸酵素複合体によりプロトンは膜を通してくみ出される。呼吸は驚くほど効率が高い。

葉緑体と光合成
葉緑体はミトコンドリアよりも区画が1つ多い。チラコイド膜 葉緑体は太陽光のエネルギーを補足して炭素固定に使う。図13-29光合成反応 励起状態のクロロフィル分子はエネルギーを反応中心に集める。図13-31光化学系反応中心とアンテナ 光エネルギーがATPとNADPHの合成を駆動する。図13-33 チラコイドでの電子の流れ炭素固定はリブロースビスリン酸カルボキシラーゼが触媒する。葉緑体での炭素固定からスクロースやデンプンが作られる。図13-36有機分子生成ミトコンドリアと葉緑体にある遺伝システムは原核生物であった祖先の性質を反映している。

単細胞だった祖先生物
RNAの塩基配列は進化の歴史を示している。P440 図13-39系統樹 太古の細胞は高温環境から出現したと考えられる。Methanococcusは無機物質のみを栄養源として暗所で生活する。P442 図13-40炭素固定とエネルギー生産

3回目(2004.10.19)膜の構造、細胞内区画と細胞内輸送(11、14章)
細胞は多数の化学反応をする場であり、効率化を計っている。各反応を区別する方法として2つ。
1.   大型のタンパク複合体の形成 2.膜で包まれた区画化

細胞内区画

1.細胞器官(オルガネラ)の機能と由来。
2.膜の構造と機能・役割
3.   オルガネラが特有のタンパク質組成を維持しているしくみ。タンパク質の選別protein sorting の目印は、タンパク質合成時のペプチド(シグナル配列、一部のアミノ酸配列)にある。
4.小胞輸送vesicular transport、エキソサイトーシス、エンドサイト-シス

1.膜で包まれた細胞器官
真核細胞には膜で包まれた細胞器官の基本セットがある。図14-2、表14-2 細胞器官にはそれぞれ異なる進化の道筋がある。核膜と小胞体の起源。図14-3

2.膜の構造について(11章)
2-1. 脂質二重層(細胞膜の基本構造)
膜の脂質は水中で二重層を形成する。図11-4 リン脂質、コレステロール、糖脂質 脂質二重層は二次元の流動体である。図1-13、図11-15 脂質二重層の流動性はその構成成分によって決まる。図11-16 脂質二重層は非対称である。図11-17 脂質分布の非対称性は細胞内で作られる。脂質二重層は溶質やイオンを通さない。図11-20

2-2. 膜タンパク質(膜の機能の本体)図11-21
膜タンパク質と脂質二重層との結合はさまざまである。図11-22 膜貫通型、脂質連結型、タンパク付着型二重層を横断しているポリペプチド鎖はα-へリックスであることが多い。図11-24、図11-25
(膜タンパク質は界面活性剤によって可溶化し、精製できる。)(全構造が解明された膜タンパク質はほとんど無い。)(細胞膜は細胞皮層により強化されている。)
細胞表層は炭水化物(オリゴ糖)で覆われている。図11-33 細胞の保護、潤滑剤、識別、接着などの役割
細胞は膜タンパクの移動を限定できる。図11-36 図11-37

タンパク質の選別(14章)
タンパク質は細胞質のリボソームで作られる。タンパク質を細胞器官に運び込む方法は3つある。図14-5 膜を通過する。核膜孔を通る。小胞輸送。タンパク質は核膜孔を通って核内に運び込まれる。図14-7、9

シグナル配列がタンパク質を適切な区画に誘導する。14-3
ミトコンドリアや葉緑体に輸送されるタンパク質はその構造をほどく必要がある。図14-10 タンパク質は合成されながら小胞体に取りこまれる。図14-12 遊離リボソームと膜結合リボソーム 水溶性タンパク質は小胞体内腔に放出される。図14-14、15、16 膜貫通タンパク質の脂質二重層内での配置は、輸送開始と輸送停止のシグナルが決めている。

小胞による輸送
輸送小胞は異なる区画間で水溶性タンパクと膜を輸送する。図14-17 小胞の出芽はタンパク質の被覆分子の集合から始める。クラスリン被覆小胞。図14-19
(小胞の特異的融合はSNAREの働きによる。)
分泌経路
ほとんどのタンパク質は小胞体で共有結合による修飾を受ける。図14-22 小胞体からの搬出の調節はタンパク質の品質を保証する。図14-23 ゴルジ体ではタンパク質の修飾と選別がさらに進められる。図14-24 シスゴルジからトランスゴルジへ 分泌タンパク質はエキソサイトーシスにより細胞から放出される。図14-25、26
飲食作用経路
食細胞は大型粒子を摂取する。図14-27,28 (液体と巨大分子は飲作用により取り込まれる。動物細胞;受容体を介した飲食作用は特殊な経路として働いている。飲食作用で取り込まれた巨大分子はエンドソームで選別される。図14-29リソソームは細胞内消化を行う主要部位である。図14-32

4回目(10/26)膜を通した輸送と細胞の情報伝達12、15章)
12章 膜を通した輸送(細胞膜を介したイオン輸送は重要な生物現象)
細胞内と細胞外では、イオン濃度が大きく異なる。細胞が生きて機能してゆくためには、この差を維持することが重要である。表12-1細胞内外のイオン濃度差
膜内輸送タンパク質の作用による。1.運搬体タンパク質 2.チャンネルタンパク質(イオンチャネル)

1.運搬体タンパクとその機能(p386、表12-2
運搬体タンパク質による輸送はきわめて選択性が高く、1種類の分子しか運ばない場合が多い。図12-3 輸送される分子(溶質)は受動輸送か能動輸送により膜を透過する。図12-5 受動輸送は、濃度勾配、電気的力(電気化学的勾配)により引き起こされる。
電気化学的勾配:濃度勾配から生じる力と膜を介した電位差による力を合わせた駆動力
12-7 電気化学的勾配をつくる2つの方法

膜電位(膜内外の電位差)は全ての細胞で発生している。図12-25膜電位を発生させるイオンの分布状態。図12-26 K+の役割(細胞内はかなり高い濃度) K+漏洩チャネル
膜電位は特定のイオンに対する膜の透過性によって調節されている。能動輸送では、輸送される分子(溶質)が電気化学的勾配に逆らって輸送される。
12-8 3つの方法 1.共役輸送体 2.ATP駆動ポンプ 3.光駆動ポンプ
動物細胞はATP加水分解のエネルギーを使ってNa+を細胞外に運ぶ。図12-9

Na+-K+ポンプはリン酸基の一時的な付加により駆動される。図12-11
動物細胞はNa+勾配を使って栄養物を能動的に取り込んでいる。図12-13グルコースポンプ。図12-12 共役輸送体(シンポート、アンチポート)。
Na+-K+ポンプは動物細胞の浸透圧調節にかかわっている。細胞内のCa2+濃度はCa2+ポンプにより低く維持されている。
植物や菌類、細菌ではH+勾配が膜輸送の駆動力として使われている。図12-17動物と植物の違いまとめ(p386、表12-2

2.イオンチャネルと膜電位
膜を介して小型分子を透過・輸送させる方法。イオンチャネル。その構造。図12-18 イオンチャネルはイオン選択性をもち、しかもゲートの役割を備えている。イオンチャネルは開と閉の状態をランダムに切り替えている。イオンチャネルの種類として、1.イオン選択性の違うもの、2.ゲート開閉の仕方が違うもの。図12-22ゲートをもつイオンチャネル電位依存性イオンチャネルは、膜電位(膜内外の電位差)に反応する。

3.神経細胞のイオンチャネルとシグナル伝達
神経細胞:ニューロン。1個の細胞体。1mほどあるものもある。)の基本の仕事は、シグナルを受け取り、運び、引き渡すこと。図12-28 いろいろな神経伝達の情報があるが、シグナルの形態はニューロンの細胞膜内外の電位変動(という同じかたち)である。
活動電位(神経インパルス、電気的興奮の伝わる波)は、遠くまで迅速に情報を伝える伝達手段である。毎秒100mの速度。弱まることがなく、端から端まで伝わる。
ニューロンの活動電位は、急激な細胞膜の局所的脱分極(膜電位の負の値がわずかに小さくなること)により生じる。
脱分極は、別のニューロンから放出される神経伝達物質によって引き起こされ、活動電位の発生は、神経細胞膜に存在する電位依存性イオンチャネル(Na+チャネル)により伝搬される。
12-32 ある一定の閾値を超える大きさの脱分極刺激が来ると、直ちに膜のその部分の電位依存性イオンチャネル(Na+チャネル)が一時的に開き、少量のNa+が電気化学的勾配に従って細胞内に流れ込む。正電荷の流入により、膜の脱分極が進み、もっとたくさんの電位依存性イオンチャネル(Na+チャネル)が開き、脱分極がさらに進む。(自己増幅過程)Na+に膜を通過させる電気化学的駆動力が0になると、電位依存性イオンチャネル(Na+チャネル)が不活性型となり、イオンの出入りが無くなり、膜電位は元の状態に戻る。電位依存性イオンチャネル(Na+チャネル)は閉じた状態となる。
12-35 神経末端から標的細胞へのシグナルの伝達。シナプス間隙。電気シグナルは直接伝わらない。
ニューロンからニューロンへの情報伝達は、神経伝達物質(小型の化学シグナル)が行う。
電気シグナルにより、神経末端にある電位依存性Ca2+チャネルが一時的に開き、シナプス小胞に蓄えられている神経伝達物質(化学シグナル)がエキソサイトーシスにより放出される。
(細胞外のCa+濃度は、細胞内の遊離Ca+濃度の1000倍以上。)
神経伝達物質により、標的細胞の神経伝達物質受容体が活動電位を発生する。図12-36
速い反応は、神経伝達物質依存性イオンチャネルにより、化学シグナルを電気シグナルに再変換する。アセチルコリン。アセチルコリン受容体。
ニューロンは興奮性と抑制性の両方の入力を受け取る。表12-3
興奮性神経伝達物質;アセチルコリン、グルタミン酸。Na+Ca2+を通過させるイオンチャネル。
抑制性神経伝達物質;γ-アミノ酪酸(GABA)、グリシン。Cl-を通過させるイオンチャネル。
シナプス接続により思考や行動や記憶が可能になる。表12-4さまざまなイオンチャネル


5回目(11/ 2)細胞の情報伝達15章)
細胞間シグナル伝達の一般原理
シグネルは受容体を介して伝えられる。長距離でも短距離でも伝える。シグナル分子;タンパク質、ペプチド、アミノ酸、ヌクレオチド、ステロイド、脂肪酸誘導体、水溶性気体は限られている。受容体タンパク質が受け取る。
15-3細胞でのシグナル伝達経路の形態A)内分泌型(2)傍分泌型(C)神経型(D)接触型
15-1シグナル分子の例 ホルモン類 局所仲介物質 神経伝達物質 接触型シグナル伝達分子
細胞は特定の組み合わせのシグナルに応答する。
細胞の調節---受容体の有無、1つの受容体に1つのシグナルが結合しても標的細胞に多様な影響を与える(図15-5 アセチルコリンの例 )。どの細胞もさまざまな受容体一式をそろえている(多数の細胞外シグナルの組み合わせにより調節されている)。
受容体は細胞内シグナル伝達経路を介してシグナルを伝達する。図15-7細胞内シグナル伝達系
1.疎水性シグナル分子は細胞膜を透過できる。ステロイドホルモン;コルチゾール、エストラジオール、テトラステロン、甲状腺ホルモン;チロキシンなど、受容体は標的細胞内の酵素や遺伝子調節タンパク質。図15-10
一酸化窒素(NO)は細胞内に入って酵素を直接活性化する。すばやい応答。グアニル酸シクラーゼによる環状GMPによる。
細胞表面にある受容体は3種類に大別される。
15-12細胞表面受容体の3種類(1)イオンチャネル連結型受容体(2)Gタンパク連結型受容体(3)酵素連結型受容体3種類の違いは、細胞外シグナル分子が結合した時に作る細胞内シグナルの性質である。
(1)イオンチャネル連結型受容体は化学シグナルを電気シグナルに変換する。(2)膜結合タンパク(Gタンパクのサブユニット)の活性化による一連の反応開始(3)受容体細胞質側の酵素類の活性化。
細胞内シグナル伝達系は一連の分子スイッチとして働く。
15-13分子スイッチとしての2つの方法(1)リン酸化によるシグナル伝達(2)GTPタンパク質によるシグナル伝達

Gタンパク連結型受容体(7回膜貫通型タンパク質スーパーファミリー)図15-14
Gタンパク連結受容体が刺激されるとGタンパクサブユニットが活性化される。図15-15Gタンパクの構造(α、β、γサブユニット)αサブユニットはGTPアーゼ活性がある。図15-16スイッチ・オフ
Gタンパクにはイオンチャネルの調節を行うものがある。図15-17
膜結合酵素;アデニル酸シクラーゼとホスホリパーゼCを活性化するGタンパクもある。
環状AMPのかかわる経路は酵素を活性化し、遺伝子を発現させる。影響が速い場合と遅い場合がある。表15-2 図15-21 図15-22
ホスホリパーゼCを介するシグナル伝達経路では細胞内Ca2+濃度が上昇する。表15-3
イノシトールリン脂質経路 図15-23
Ca2+シグナルは多くの生物的過程の引き金として働く。Ca2+結合タンパク質;カルモジュリンはCa2+が結合することにより構造の安定性が変わり多様な標的タンパクに結合して活性を変化させる。例;CaMキナーゼ(タンパク質のリン酸化を起こす)
(細胞内シグナル伝達系は、伝達の速度、感度、適応性を高める:目の光受容体)

酵素連結型受容体(成長因子への応答)

活性化された受容体チロシンキナーゼは、細胞内シグナルタンパクの複合体を形成する。図15-28
受容体チロシンキナーゼはGTP結合タンパクであるRasを活性化する。図15-29 図15-30 Ras活性化によるリン酸化反応系
タンパクキナーゼのつくる連絡網は情報を総括して細胞の複雑な挙動を調節している。図15-31

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