論文に使用する文献には、基本的に「引用文献」と「参考文献」の二つのタイプがあります。ここではいくつかのルールを説明しますが、このルールは言語や分野によって基準とする形式が異なります。ただし、統一性を重視してください。
 このページではいくつかの例を示しておきますが、詳しい情報は英語の場合、MHRA: Style Guide, MLA Handbook for Writers やThe Chicago Manual of Styleを参照してください。日本語は、市販の論文作成マニュアルを参考にしてください。スペイン語では、例えばArio Garza Mercado, Normas de estilio bibliográfico para ensayos semestrales y tesisが役に立つでしょう。

 「引用文献」を説明する前に、引用の方法についてのいくつかのルールについて述べます。


1. 引用文と卒業論文自身の本文とがはっきり区別できるように書くこと。



 日本の場合、引用文には「 」を付する方法(例1)と、地の文章から切り離して改行したのち、1~2段マスを下げて記す方法 (特に長い文の時)があります(例2)。


例1:
 フルチョフがウダルに述べた、「西側がベルリンの防衛のためには戦争しないと確信している」ことが彼を悩ませていた (21)


例2:


 彼はウィーン会談で次のように述べている。

  • もしアメリカが西ベルリンから一方的な行動によって追い出されれば、将来にわたってだれもアメリカを信じなくなるだろう。アメリカの政策公約は紙屑同然とみなされるようになってしまう。現在の世界情勢は流動的であり、アジア・アフリカ地域の情勢がどのように展開してくかは予測できない (24)



 どちらを用いてもかまいません(ただし、後者の場合には「 」をつけないこと)。いずれの場合も引用文の終わりに註をつけてください(その方法については後で細かく説明します)。なお、他人の所論をパラフレーズした場合には、「 」をつけずに、註番号のみを文章につけてください(例3)。


例3:


 これまでの米英首脳会談は、アメリカのベルリン政策の形成には重要な影響を持たなかったとされてきた (39)


 一方、英語とスペイン語(ポルトガル語も同じ)の場合では、引用には “ ”を付する方法(例4)と、地の文章から切り離して改行し、一行あけたあとで1~2段マスを下げて記す方法(例5)があります。日本語と同様に、どちらも用いてもかまいません。注の付け方のルールは日本語と同じです。


例4:


He insisted "We are going to use any means. Is that clear?" (47)


例5:


In his Inaugural Address Barak Obama said.

  • My fellow citizens:
  • I stand here today humbled by the task before us, grateful for the trust you have bestowed, mindful of the sacrifices borne by our ancestors. I thank President Bush for his service to our nation, as well as the generosity and cooperation he has shown throughout this transition.
  • Forty-four Americans have now taken the presidential oath. The words have been spoken during rising tides of prosperity and the still waters of peace. Yet, every so often the oath is taken amidst gathering clouds and raging storms. At these moments, America has carried on not simply because of the skill or vision of those in high office, but because We the People have remained faithful to the ideals of our forbearers, and true to our founding documents (12).





2. 「 」を用いた引用文の中でさらに「 」を使いたい場合、引用文中の「 」は『 』に置き換えること。



3. 引用文の途中を省略する場合には、一マス空けて" …… "や" " (…) "を使用するか、「(中略)」という記号を用いること。


4. 本文中の外国語からの引用は基本的に必ず邦訳してください(スペイン語の文章や文法的な要素を指摘したい場合は問題ないです)。



引用文の方法について全体像が分かったところで、「引用文献」について見てみましょう。


1. 日本語の場合も外国語の場合も、引用を参照する時には註を利用します。現在、ワープロソフトの普及のおかげで、註をつける作業は非常に簡単になりました。またプログラムによっては自動的に註をつけてくれるものもありますが、この方法は避けてください。註は機械よりも、自分でやったほうが適切に仕上がります。


2. 現在多くの学術論文では「脚注」「文末脚注」「かぎかっこ」という三つの方式を使っています。それぞれ特定のスタイルと長所・短所がありますので覚えといた方がいいと思います。どの方法を利用してもかまいませんが、混ぜないようにしてください。ただし、「かぎかっこ」方式を利用した場合、「脚注」または「文末脚注」どちらかの方式を同時に使うことができます。


3. 「脚注」および「文末脚注」では、引用の典拠、または補足説明を書くことが多いです。また、該当部分に関わるトリビア的な知識を書く人もいます。ただし情報によっては相当長い文章になる場合もあるので、本当に必要な情報だけを書いてください。最後に、「脚注」と「文末脚注」方式は卒業論文で書いた情報の信憑性に必要な文献を参照したい時に使います。ここで気をつけて欲しいのは、どちらの場合でも参照したい文献の情報をすべて書く必要があることです。書き方はどちらでも同じです (例6、例7、例8)。

 注意点:言語によって大文字、「、」、「“ ”」、「:」、「.」などの使い方が違うので注意してください。特に、スペイン語と英語は違います。



4. 「脚注」方式の長所は読者が読んでいる文章の文献情報や補助説明を素早くみつけることができることです。ただし、その反面、同じページに多くの注を利用すると読みにくくなる場合もあります。また、図や表を利用する時に、「脚注」の影響でちゃんと表示できないこともあります。一方、「文末脚注」方式の長所は読者が読んでいる文章が多くの注に邪魔されないことです。また、図や表を利用する時にも適切です。大抵の場合は、各章の最後に書きます。ただし、各章の最後に注を置くと、読者がその情報を見失う可能性があります。


5. ここでは日本語、英語、スペイン語の文献で利用される「脚注」と「文末脚注」の例を見せます。具体的なスタイルは各言語のマニュアルをチェックしてください。また、「参考文献」の項目で詳しくやります。

日本語


いくつかのルール。

  1. 参照した文献のページをなるべく明らかにすること。
  2. 引用したページが1頁でも複数頁でも、「ページ」あるいは「頁」と書いてください。
  3. 一番最後に引用したものと同一の書物を引用した場合、「同書+Xページ」と書いてください。
  4. すでに引用された文献を引用したい場合は、「著者名(姓)+前掲+文献タイトル(略してよい)+Xページ」と書いてださい。



例6:

  • 1. 寺尾隆吉『フィクションと証言の間で―現代ラテンアメリカにおける政治・社会動乱と小説創作』(松籟社、2007年)、36ページ。
  • 2. 同書、40ページ。
  • 3. 高橋均「都市背景にみるクレオール文化とミドルクラス」遠藤泰生・木村秀雄編『クレオールの形―カリブ地域文化研究』(東京大学出版会、2002年)、148-152ページ。
  • 4. 寺尾、前掲『フィクションと証言の間で』、58ページ。

英語


いくつかのルール(Chicago Manual of Styleの場合)。

  1. 参照した文献のページをなるべく明らかにすること。
  2. 引用したページが1頁でも複数の頁でも「p.」や「pp.」とは書かないでください。
  3. 一番最後に引用したものと同一の書物を引用した場合、「Ibid.+ページ数」と書いてください(Ibid. は斜体。太字は使いません)。
  4. すでに引用された文献を引用したい場合は、「著者名(姓)+op. cit. +ページ数」と書いてださい(op. cit. は斜体。太字は使いません)。



例7:

  • 1. Barrington Moore, Social Origins of Dictatorship and Democracy (Boston: Beacon Press, 1966), 36.
  • 2. Ibid., 40.
  • 3. David Slater, “Power and Social Movements in the Other Occident: Latin America in an International Context,” in Latin American Social Movements in the Twenty-First Century, ed. Richard Stahler-Sholk, Harry Vanden, and Glen David Kuecker (Boulder: Rowman & Littlefield, 2008), 23.
  • 4. Moore, op. cit., 58.

スペイン語


いくつかのルール。

  1. 参照した文献のページをなるべく明らかにすること
  2. 引用したページが1頁の場合は「p.」、複数の頁の場合は「pp.」と書いてください。
  3. 一番最後に引用したものと同一の書物を引用した場合、「Ibid.,+ページ」と書いてください(Ibid. は斜体で書いてください。太字は使いません)。
  4. すでに引用された文献を引用したい場合は、「著者名(姓)+op. cit. +ページ」と書いてださい(op. cit. は斜体で書いてください。太字は使いません)。



例8:

  • 1. Marcel Bataillon, Erasmo y España: estudios sobre la historia espiritual del siglo XVI (México: Fondo de Cultura Económica, 1950), pp.90-150.
  • 2. Ibid., p.160.
  • 3. Juan Hernández Andreu, “Etapas en las relaciones económicas de España con el exterior (1940-1980): un caso de liberalización tardía”, en España y la unificación monetaria Europea: una reflexión crítica, editado por Ramón Febrero (Madrid: Anacus, 1994).
  • 4. Bataillon, op. cit., p.85.

6. 「かぎかっこ」形式の場合、引用の直後に最小限の文献情報を与えます。引用文献そのものの正確な情報は、論文の最後に書く参考文献目録のセクションに書きます。[ ]の中に著者の姓と年を入れます。[ ]とその情報は直接本文に書いてください。字や書式を変える必要はありません。日本語も外国語も形式は同じですが、特に日本語の場合、発行年の数字の後には「年」という字を書かないでください。
 この方法の長所は、余計な情報で読者を惑わさないことと能率的に紙を利用することですが、読者は常に「参考文献」をチェックする必要があり、多くの情報を見失うことがあります。
 また、参照した著者の中に同じ名前(性)が多く存在した場合、その区別が分かりにくい時があります。また、同一著者が同一年に発行した著約が幾つも参考文献目録にあった時も、その区別が分かりにくい時があります。そこで、同じ名前 (姓)が名前が多くあった場合、区別する為に著者の姓の後に名のイニシアルをつけてください。例: [ボルヘス J.、2001]。ただし、著者がスペイン語圏の場合は二番目の姓を利用するのをお勧めします。一方、発行年を区別する場合には、発行年の後に小文字のアルファベッドをつけてください。例: [ボルヘス J.、2001a]。では、いくつかの例を見てみましょう。

a) 本文中に著者名が出て来れば、その直後に発行年と引用ページをかぎかっこで括って典拠を示します。

  • 大串 [1995: 64] によれば……
  • G. アーモンドとS. バーバ [1965: 37] は……



 ただし、その文献をはじめて引用する場合は、かぎかっこの中に著者名も明記してください。

  • 大串和雄 [大串、1995: 64] によれば……
  • G. アーモンドとS. バーバ [Almond and Verba, 1965: 37] は……



b) 本文中に著者名が出て来なければ、文末に著者名、発行年とページをかぎかっこで括って典拠を示します。

  • ……である [大串、1995: 64]。
  • ……となる [Almond and Verba, 1965: 37]。



c) 参照したい時には、適宜丸かっこ等を利用してください。

  • ……である(詳しくは [大串、1995: 64; Almond and Verba, 1965: 37] などを参照)。



d) 参照文献が多数で本文中に記すと議論の流れを中断してしまいそうな時には、文献情報を註に落とし込み、今まで述べてきた「脚注」か「文末脚注」形式で示してください。


e) 註の中で補足説明をおこなう場合も、註の文章の典拠を示したい時はa)~c)に準じて明記してください。


f) 翻訳文献の場合は、原書の発行年:引用ページと、翻訳書の発行年:引用ページを等号 (=) で結んでください。原書のページは省略してもかまいません。

  • ボルヘス [1925=2001:13] によれば……











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