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獣医微生物学研究室

岡村 雅史・相川 知宏
帯広畜産大学 獣医学研究部門
基礎獣医学分野 応用獣医学系

細菌感染症の制御に向けて

私たちの研究室は、家畜・家禽の細菌感染症の制御・撲滅に向けて、病原細菌が示す宿主特異的な感染・発症メカニズムを解明すべく、研究を行っています。また、この研究を通じて、宿主動物との共進化の歴史を理解し、21世紀に解決すべき課題である 「食の安定供給」・「食の安全の確保」・「人獣共通感染症の制御」に貢献すること、そして関連する人の細菌感染症の制御にもつながる成果を発信することを目指しています。

ニュース

2024.02.02 JICA研修生2名受け入れ
2023.09.01 相川知宏 准教授 着任
2023.08.26 鈴木(6年生) 第88回日本細菌学会北海道支部学術総会にて発表、支部会賞(優秀賞)受賞
2023.03.17 岡村 第96回日本細菌学会総会ワークショップ5にて講演
2023.02.10 JICA研修生1名受け入れ(〜04.26)
2022.10.29 岡村 家畜感染制御ネットワーク(JLIC)第2回セミナーにて座長
2022.03.05 岡村 家畜感染制御ネットワーク(JLIC)キックオフセミナーにて座長
2021.12.01 4年生1名配属
2021.10.11 webサイト開設
2021.08.28 岡村 第58回獣医疫学会学術集会にて講演
2021.01.01 岡村着任

研究内容

 私たちは、主に家畜・家禽のサルモネラ感染症を研究対象としています。

 サルモネラ属菌(Salmonella spp.)は、一般的に食中毒の原因菌としてよく知られており、その菌体と鞭毛の抗原の組み合わせにより2,700種類に上る血清型に分類されています。ほとんどの血清型はいわゆるGeneralistsと呼ばれ、様々な動物に消化器症状(人では食中毒、家畜では主に幼獣の下痢症)を引き起こしますが、死に至ることはほとんどありません。一方で、わずか10種類に満たない血清型は宿主特異性が強く、特定の動物にのみ感染して全身伝播し敗血症を引き起こすため、感染動物は急性経過で死に至ります。また、妊娠動物が感染すると死流産を起こしたり、垂直伝播により胎内・卵内で菌に感染した子孫が保菌動物となってさらに水平伝播の原因となることもあります。しかし、この宿主特異的な強い病原性や生殖器への組織トロピズムをもたらすメカニズムはまだ明らかにされていません。
 私たちはこのサルモネラ属菌をモデルとして、宿主特異的な病原性や組織トロピズムをもたらすメカニズムを解明すべく、研究を進めています。これらの謎を明らかにすれば、宿主動物との共進化の歴史を理解することにつながるだけでなく、さまざまな動物に感染し症状を引き起こす人獣共通感染症の感染メカニズムにも迫ることができると考えています。
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家禽チフスとひな白痢の病原メカニズムの解明

家禽チフスは血清型 Gallinarum生物型Gallinarumの感染によって起こる鶏の急性致死的敗血症性疾病です。世界中で大きな経済被害をもたらすため、国際獣疫事務局(WOAH)のリスト疾病に含まれ、わが国でも家畜伝染病予防法で法定伝染病に指定されています。現在常在国では家禽チフスの生ワクチンが用いられていますが、その効果が不安定なため、有効な新規ワクチンやそれに代わる予防法の開発が望まれています。しかし、その標的となりうる本菌の病原因子群やそれらが関与する家禽チフス発症機序についてはまだ理解が進んでいません。私たちは、家禽チフス発症や菌の病原性に重要と考えられる50種類の遺伝子を特定しました。この成果を足掛かりに、宿主特異的な病原メカニズムの全体像を明らかにしようとしています。また、ひな白痢菌(同生物型Pullorum)の卵巣への組織トロピズムの解析により介卵感染メカニズムの解明も進めています。

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牛サルモネラ症のモニタリング法と予防対策の確立

牛サルモネラ症は、北海道内で発生件数が多いことが知られています。血清型Typhimuriumと血清型Dublinによるものは届出伝染病に指定されており、発生農場の経済被害が大きいため、大きな問題になっています。特にDublinは妊娠牛で死流産を起こすことがあるほか、糞便に排菌されないことが多く、糞便検査で感染牛を摘発するのは困難です。そこで我々は、いくつかの農場においてサルモネラ検査と血清学的検査を併用したモニタリングを行い、牛群がどの段階でサルモネラに感染するのかを調べるとともに、ワクチネーションの推進も含めたサルモネラ症発生予防対策の確立に向けて研究を進めています。

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馬パラチフスの病原メカニズムの解明

北海道内では、歴史的に血清型Abortusequiによる馬パラチフスが散発しています。この病気は伝染性流産や多発性膿瘍を主徴とし、届出伝染病に指定されています。先進国での発生が激減し、WOAHのリスト疾病から除外されてしまったため、海外での発生状況は正確に把握できていませんが、南米、ヨーロッパ、アジアでは今も発生があります。本血清型と馬パラチフスに関する詳細な研究は、世界的にほとんど進んでいません。そんななか、近年道内十勝地方における連続的な馬パラチフス発生を受けて、私たちは本菌の病原性や発症機序の解析を進めています。

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鶏群・鶏肉の食中毒起因菌汚染低減対策の確立

汚染鶏肉を原因とする食中毒は増加の一途を辿っています。その主な原因菌はサルモネラとカンピロバクターです。喫食前の十分な加熱調理といった消費段階における対策だけでは食中毒リスクを低減できない状況です。そこで、私たちは鶏肉フードチェーンの上流にあたる食鳥処理段階、さらには農場での生産段階にまで遡り、鶏群の食中毒菌汚染の低減に向けた対策の確立に向けて、農場と食鳥処理場において鶏群と鶏肉の汚染状況の調査を行ってきました。今後はサルモネラの農場への侵入経路の解明が課題です。

ラボメンバー

2023年9月1日に相川准教授が加わり、教員2名体制となりました。また、研究補助員1名Nahid RAHMAN博士も加わりました。現在新たな4年生の配属を心待ちにしています。大学院生も絶賛募集中です。勉強でも遊びでも熱中できる若者と楽しく研究をしたいと思っています。

学部生:教員1名あたり1学年2名(当研究室としては最大4名)の共同獣医学課程学部生が配属可能です。まずは気軽に見学に来てください。随時歓迎ですが、事前連絡をもらえると確実に対応できます。
大学院生:修士課程は畜産科学専攻博士前期課程の動物医科学コース、博士課程は獣医学専攻博士課程が受け皿となります。興味のある方は気軽にご相談ください。
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岡村 雅史

教授

教員紹介
Researchmap
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相川 知宏

准教授

教員紹介
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主な担当科目

V2 微生物学I
V3 微生物学II
V3 微生物学実習
V3 感染症学
V3 伝染病学実習
V3 動物衛生学実習
V4 食品衛生学実習
M 動物医科学特論
M 動物病態・病因制御学特論2

各種お問い合わせなど

共同研究や各種委託調査・研究などは随時受付中です。

アクセス:
080-8555 北海道帯広市稲田町西2線11番地
帯広畜産大学 総合研究棟1号館 S2102
岡村:0155-49-5389;okamuram[at]obihiro.ac.jp
相川:0155-49-5515;caikawa[at]obihiro.ac.jp

Last updated April 01, 2024

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