1960年代の日本の「砂糖外交」:「キューバ糖依存」回避の模索



研究課題番号:18K11772
 1959年のキューバ革命の成立後、日本政府は革命政府を承認し、外交関係を継続しました。この「友好関係」はアメリカ合衆国の対キューバ「封じ込め」政策後も変わることもなく、日本政府は、カストロ政権との共存を図りました。当時、キューバは日本にとって最大の砂糖輸入先国であり、この状況が「親キューバ」路線の大きな理由であったと考えられてきました。しかし、「キューバ糖依存」を一次資料で実証した研究は少ないです。本研究は、1960年代の日本とキューバの関係を分析することにより、この時代の「砂糖外交」を再検討することを目的としています。具体的になぜ日本は「キューバ糖依存」を回避できなかったのかを探り、この政策形成過程の実証的な分析を行うことを目的としています。
 その際に、日・米・キューバの史料分析に加えて、当時、日本の砂糖市場において重要な位置に置かれていた台・豪にも焦点を合わせる予定です。このような研究は、日・ラ米関係史に新たな視点を提供すると同時に、まだ少ない「食料外交」の研究に貢献できると確信しています。

  • 「日本とキューバ革命:1959年のゲバラ使節団」『国際政治』第207号2022年、97-112頁。
  • La Revolución cubana y la política exterior japonesa(第1回オンライン国際学会LASA / ASIA 2022、2022年2月19日) (スペイン語)
  • 「1960年代の日本対キューバ政策:「キューバ糖依存説」の再検討」(同時代史学会、2019年度次大会、2019年12月)(日本語)
  • La visita de Ernesto Guevara a Japón, vista desde los archivos diplomáticos(日本ラテンアメリカ学会、第40回定期大会、2019年6月)(スペイン語)
  • "Una "historia olvidada": la negociación del acuerdo comercial cubano-japonés de 1954", 2019, Anales de Estudios Latinoamericanos, No.39, pp.1-44.


(主な分析対象)

  日本の対キューバ政策
  日本の対ラテンアメリカ政策
  日本の砂糖産業

池田政権の「対米協調」外交像の再検討―キューバ糖問題を中心に



研究課題番号:26870022
 本研究は、1960年代前半の日本の対キューバ政策を検討することにより、池田勇人内閣(1960〜1964年)の「対米協調」外交像を再検討することを目的としている。また当時「対米協調」路線を進めていた池田政権が、なぜアメリカ合衆国が敵対視するカストロ政権と国交を維持したのかを探り、この政策形成過程の実証的な分析を行うことを目的とする。
 本研究の具体的な目的
① 「キューバ糖依存」が池田政権の政策決定に与えた影響を解明すること。
② キューバを巡る日米間の葛藤を解明すること。

 その際、外交資料分析を中心とした研究を行いたい。これまでの日・ラテンアメリカ関係の研究は、外交資料という一次資料を利用しておらず、そのほとんどが二次資料に依拠している。私は外交資料を使うことによって、今まで日本やラテンアメリカ諸国のける研究で見逃されてきた問題点を浮き彫りにすることができると確信しています。

  • Japón y el gobierno revolucionario cubano durante la primera mitad de la década de 1960(日本ラテンアメリカ学会、第36回定期大会、2015年5月)
  • 「La política exterior de Japón hacia Cuba durante la primera mitad de la década de 1960: ¿un intento de una diplomacia autónoma?」 2016年 『イベロアメリカ研究』第38巻 第1号、15-36頁
  • “Destinos similares: Hayato Ikeda y Tokio 1964 (istor, No.65, 2016, pp.81-94)
  • 1950年代の日本の対ラテンアメリカ政策におけるキューバの重要性 (日本国際政治学会 2016年度研究大会、2016年10月)
  • 日本とキューバ革命:ポストコロニアリズムの視点から(ポストコロニアル法理論研究会 第五回、2017年1月)

(主な分析対象)

  日本の対キューバ政策
  日本の対ラテンアメリカ政策
  日本の砂糖産業

探偵小説の政治学(慶応義塾大学のプロジェクト)


 植民地または非公式帝国内の国を含む非西欧地域では、シャーロック・ホームズものを中心とする「名探偵」の活躍する探偵小説が、20世紀初頭という同時代に誕生・流行し始める。これは、探偵小説の国際化という社会・文化的側面だけではなく、近代的な政治統治制度の定着との関連で、政治学的に興味深い現象である。
 刑法・警察機構という統治機構の近代化の成立によって犯罪が社会悪となった。その社会悪は国内外の政治思想や国内的な政治の対立図式を反映し、探偵小説の生産と消費空間を生みだした(探偵小説の国内化)。したがって、本研究の目的は探偵小説という現象を媒介にして、非西欧地域のおかれた国際政治環境および国内政治構造を明らかにすることにある。
 本研究の仮説は、20世紀初頭は犯罪が国際化しただけではなく、それが南の国内統治環境の近代化とナショナリズムの政治の展開を促したというものである。
 私は、メキシコのケースを担当しています。20世紀初頭のメキシコでは、探偵小説と呼べるものはないです。警察組織が未熟であったこと、ポルフィリオ・ディアスの独裁政権の検閲があったこと、また知識人・文学者なんどが親仏であり,英国で参加になった「探偵小説」に興味が持ったなかったこと、さらに大衆もホームズのような「名探偵」よりも、「犯罪者」、特に英雄的な盗賊を魅力に思っていたことが,メキシコにおいて探偵小説が成立しなかった理由と考えられます。私は今後、政治体制に焦点を当て、研究したいと思っています。

  • Why the Detecitve Fiction Did Not Became Popular in the Early Twentieth-Century Mexico?(探偵小説の政治学勉強会、慶応義塾大学、2013年3月)
  • La ausencia de las novelas detectivescas en las postrimerías del México decimonónico: Imperialismo y modernidad durante el Porfiriato(アジア太平洋州ラテンアメリカ研究議会、第6回大会、2014年9月) (スペイン語)
  • Imperialism, Modernity, and Literature: Why Detective Diction Did Not Become Popular in Early 20th Century Mexico, 2015, Keio Communication Review, No.37, pp.53-70 Download

(主な分析対象)


  19世紀末のメキシコ政治史
  ディアス独裁政権
  メキシコ文学史

占領期における日・ラテンアメリカ関係


 占領期の日本がラテンアメリカに対してどのような政策を展開してきたのかを検討し明らかにしたいです。この時代においてラテンアメリカとの関係はどのようなものだったのだろうか。サンフランシスコ講和条約におけるラテンアメリカの役割は何だったのだろうか。条約の調印後の日・ラテンアメリカ関係はどのように変わったのだろうか。
 私は、これらの疑問に今後の研究で答えてみたいです。その際、外交史料分析を中心とした研究を行いたい。これまでの日・ラテンアメリカ関係の研究は、外交資料という一次資料を利用しておらず、そのほとんどが二次資料に依拠している。私は外交史料を使うことによって、今まで日本やラテンアメリカ諸国における研究で見逃されてきた問題点を浮き彫りにすることができると確信しています。

  • ¿Reencuentro fortuito? Japón, América Latina y la ocupación", 2012, istor, No.51, pp.59-90. Download
  • 占領期の日本・ラテンアメリカ関係——押し付けられた再会 (北大政治研究会、定期研究会、2014年5月) (日本語)



(主な分析対象)


  日本の対メキシコ政策
  日本の対ラテンアメリカ政策

メキシコの対中米政策


 1821年に独立を達成した新生メキシコ国家は中米地峡を直ちに併合するが、国内紛争と中米人の強い反発により、その政策は失敗します。以後、メキシコは中米情勢には関わるのを避けるが、国境を共にするグアテマラと英領ホンジュラス(現在のベリーズ)と嫌でも関与することになります。しかし、このメキシコの「中米離れ」は19世紀後半に大きく変わることになります。その理由はアメリカ合衆国が本格的に中米情勢に関与したからであす。メキシコは米国の存在を強く懸念し、中米情勢に再び関与しました。その過程で、中米再統合を妨害し、米国に反対する中米人を支持することになります。
 私は、メキシコと中米の「特別な関係」を様々な角度が分析することを試みました。特に、あまり行われて来なかった1950年代・1960年代の関係を外交史料で分析しました。私は外交史料を使うことによって、今までメキシコと中米諸国における研究で見逃されてきた問題点を浮き彫りにすることができると確信しています。

  • La política exterior de Vicente Fox: una perspectiva preliminar (日本ラテンアメリカ学会、第30回定期大会、2005年6月)
  • 「Vicente Fox y el futuro de la diplomacia mexicana」『 イベロアメリカ研究』第28巻第2号 2006年、45-60頁.
  • El lugar de Belice en la política exterior mexicana (日本ラテンアメリカ学会、第28回定期大会、2007年6月)
  • 「La independencia de Belice y la proclamación del Corolario Padilla Nervo」『ラテンアメリカ研究年報』第29号 2009年、59-96頁.
  • La ruptura de las relaciones méxico-guatemaltecas: el caso del conflicto pesquero de 1959 (日本ラテンアメリカ学会、第30回定期大会、2009年6月)
  • メキシコと中米統合ー19世紀からパナマ・プエブラ・プラン (日本国際政治学会、2009年度研究大会、2009年11月)
  • 冷戦とメキシコ外交—1954年の「グアテマラ危機」を中心に(日本ラテンアメリカ学会、第31回定期大会、2010年6月)
  • 「Hacia una reexaminación del papel de México como potencia media: el caso de la Crisis de Guatemala de 1954」『イベロアメリカ研究』第32巻第2号 2010年、45-66頁。
  • "Conflicto y conciliación: las relaciones méxico-guatemaltecas de la década de 1960", 2010, Waseda Global Forum, No.7, pp.305-337.





(主な分析対象)


  メキシコのの対中米政策
  グアテマラ
  ベリーズ











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