病理解剖
病理解剖は死を通じて病を理解するためのひとすじの光です
病は臓器、組織、細胞の形を変え、その成り立ちを私たちに示します
私たちは病理検査によってその変化を探求し、病の本質を追求します
そして新たな治療方法、より適切な診断方法を探ります
一つ一つの病理解剖、それ単独では病の成り立ちを明らかにできるものではありませんが、検査を積み重ねることで獣医学、獣医療は進歩してきました。
かけがえのない命を次世代につないでいくため、病理解剖へのご理解をいただければ幸いです
病理解剖の目的
病理解剖は、生前の診断や治療が妥当であったか、または現在の技術水準では明らかにできなかった病気や異常がなかったかなどを確認するため、病気の原因を調べます。病理解剖で明らかにされた変化は、病気と闘われた方ご自身の病態(病気の成り立ち)を解明するのに役立つだけでなく、同じような病気で苦しんでいる動物たちの診断や治療のために大変貴重な情報となります。
病理解剖の手順
病理解剖の所要時間は約2〜3時間です。通常はお腹と胸の中を調べますが、病気の種類によって頭部(脳)なども調べさせていただく場合もあります。頭部を検査した場合でも、外見が損なわれないよう施術いたしますが、その際には担当医よりご説明を申し上げ、ご了承を得るよういたします。切開後の皮膚は縫合されますが、切開の範囲についてご要望がある場合には、事前に担当医までお申し出下さい。病理解剖のすべての行程は、遺体に対する尊厳の基、礼意を失することなく執行します。
ご遺体は時間の経過とともに状態が変化していくため、正確な最終診断のためには、病理解剖はできるだけ速やかに行われることが理想的です。ですが、病理解剖前にお別れの時間が必要な場合や、病理解剖の適用についてご家族で相談する必要がある場合など、家族の数だけ、事情があることが考えられます。必ずしもすぐに病理解剖を実施する必要はありませんので、病理解剖の可否や実施時間について、ご家族とご検討いただけますようお願いします。
病理解剖後のご遺体について
病理解剖後のご遺体については、ご家族のご要望によって、
- 縫合・清拭後にお返しする
- 学内施設にて火葬にした後にお返しする
- 学内施設にて火葬した後、学内慰霊(納骨)施設にて慰霊する
病理解剖後の検査
病理解剖で検査された臓器や組織の一部は採取・保存され、パラフィンという?に埋めてパラフィンブロックを作ります。それを薄く切ってガラスにはり付け、様々な染色を施してスライドガラス標本を作製し、顕微鏡観察を行います。
病理解剖による肉眼検査と、この顕微鏡観察によって病理医が病理診断を行います。その中では、主要な疾患や死因、検査した臓器・組織の病変や治療などとの因果関係が明らかにされます。
病理学的検索を終えた後の臓器・組織は、一定期間保管した後、荼毘に付されますが、スライドガラス標本は半永久的に保存されます。
検査はおおむね3か月程度で終了し、担当医に結果が通知されます。最終結果についての説明をご希望の場合は担当医を通じて知ることができますので、ご希望の場合は担当医までお申し出ください。
病理解剖の獣医学・獣医療への貢献
臨床診断と病理解剖診断が一致しないことや、直接死因が病理解剖で初めて明らかにされることは、現在でも少なくありません。このような不一致を少なくする努力こそが、これまでの医学・医療進歩の大きな原動力でした。
病理解剖診断を活用した議論やカンファレンスは、獣医学生と獣医師の生涯教育に貢献しています。病理診断が、学会や学術誌に報告されることもあります。それらの際は、匿名化に十分留意いたします。
病理解剖の結果は獣医療・獣医学の発展に生かされます。病理解剖とは、ある意味亡くなったご家族がなしうる社会への最後の貢献です。可能な範囲でご協力いただけますようお願いいたします。
慰霊式
大学では年に一度、無宗教式の慰霊式を開催し、ご協力いただいた動物達への感謝と慰霊を行っています。
慰霊祭は本学動物医療センターが主催し、獣医学教育へご協力いただいた動物たちのご家族様を式に招待して執り行われます。
式は無宗教式で行われ、招待したご家族様、獣医学教育に携わる教員、学生によって動物達への感謝と慰霊の時間を共有します。
当教室(家畜病理学教室)からは、病理解剖にご協力いただいたご家族様、ご遺体献体にご協力いただいたご家族様をお招きしています。
第一回目伴侶動物慰霊式の様子はこちら
費用
病理解剖の経費は全て大学が負担致します。
受け入れ
病理解剖は、飼い主様から直接のご依頼は受け付けておらず、主治医である獣医師からの依頼によって受け付けています。お亡くなりになった動物のご家族様で、病理解剖をお考えの方は、主治医の先生までご相談ください。
ご遺体の寄付(献体)
病理解剖とは別に、ご遺体のご寄付もお願いしています。
獣医師養成課程においては学生自身による病理解剖経験が重要視されていますが、残念ながら十分な数の病理解剖検体数を確保できておりません(犬と猫の症例が不足しています)。そこで、学生実習に供するために、亡くなってしまった動物たちのご遺体を寄付していただきたいと広く大学近隣にお住いの皆様にお願いしているものです。
寄付については、こちら“犬猫のご遺体の寄付について”をご覧ください。
大学に動物ご遺体をご寄付頂いた場合は、そのご協力に感謝し、学内施設にて火葬、学内慰霊施設に納骨・慰霊を行います。現在受け入れ可能な動物は、犬と猫のみとなっています。
病理解剖にはあまり明るいイメージはないかもしれませんが、病理解剖によって得られた知見は獣医学を進歩させる原動力になります。かわいい、共に暮らしてきた伴侶たちを病理解剖にご献体いただく事には抵抗があるかもしれませんが、病理解剖による命のリレー、また、次世代のまっとうな獣医師を育成するためにも、ぜひご協力いただけますようお願いします。
その他
病理解剖に関する資料です。
・病理解剖パンフレット
・病理解剖の承諾書
・慰霊施設の運用について
その他お問い合わせについては、horiuchi(アットマーク)obihiro.ac.jpまでお願いします。