提案
障がい者やこどもが安心して騎乗できる馬を新しい技術により計画的に生産することにより、国が提唱している社会福祉上の問題の解決にもつながる可能性が考えられる。
農福連携は、農業と福祉が連携し、障がい者の農業分野での活躍を通じて、農業経営の発展とともに、障がい者の⾃信や⽣きがいを創出し、社会参画を実現する取り組みである。障がい者の⽣活の質向上等が期待できる農福連携は、いわゆるホースセラピーとしての障がい者乗馬等の取り組みが含まれることはもとより、今後の障がい者の社会進出、就労補助が進む中で、「障がい者の乗馬や馬とのふれあいを通じた余暇活動の充実」としても十分に考えられる支援となる。障がい者乗馬の効率的生産とその産業に関わる健常者が馬を介して障がい者とともに新たな産業を見出すことが期待される。
障がいを理由とする差別の解消;全ての国民が、障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、いわゆる「障害者差別解消法」)が制定され、平成28年4月1日から施行された。農畜産系大学が、障がい者乗馬の積極的な実施および情報の発信を推進し、さらに障がい者乗用馬に適した馬の新しい生産法を開発、普及することは、馬を利活用することにより健常者と障がい者が平等に暮らすノーマライゼーションを実現する上で、有用な社会貢献モデルの構築となる。
健康寿命延伸プラン;厚生労働省は2040年を展望した社会保障・働き方改革本部の取りまとめ、高齢者の人口の伸びが落ち着き、現役世代が急激に減少する時期を見越し、健康寿命(介護に頼らずに自立生活が可能な生存期間)を2040年までに男女ともに3年以上伸ばすことを掲げている。そのためには、より少ない担い手でも運用できる医療・福祉の現場の実現や、体を動かす場等の拡充、予防に資するエビデンスの研究等が必要とされている。帯広畜産大学は、令和元年6月16日に、北海道浦河郡浦河町ならびにNPO法人ピスカリと3者連携協定を締結し、障がい者乗馬・高齢者乗馬に必要な技術を指導する学生インターンシップおよび乗馬療育講習会の実施を円滑に行う取り組みに力を入れている。本学との連携は、上記の健康寿命延伸を直接的に推進するとともに、生産された馬の適性を判定し、高齢者乗馬に利用しつつ、科学的エビデンスを収集する。
社会福祉に貢献する特用家畜を効率的に生産する技術を全国に普及し、併せて、受精卵の凍結保存法を確立することは、本学のこれまでのノウハウと実績から十分に可能であり、新規性・先導性を十分に持ち合わせた事業の展開が可能であり、成功する可能性も高い。