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「十勝型フードシステム形成プロジェクト キックオフシンポジウム」開催要旨(3)

本記事は全4ページ構成の記事の3ページ目です。

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トークセッション

テーマ1:AIや情報技術の活用について

○宮竹教授
 堆肥化ロボットの開発では、システム設計の段階でAIを活用しています。ただし、実際に現場へ導入する際にAIを搭載するかどうかは、これから検討していくことになります。一番の理由はコストです。私たちがつくっているのは堆肥であって、精密機械をつくっているわけではありません。できるだけ安く堆肥をつくることが前提になりますので、システムそのもののコストを下げることが重要になります。
 今後、AIを取り入れることで全体としてコストが下がったり、効率が良くなったりするのであれば、AIを積極的に使っていくことも十分に考えられます。技術ありきではなく、現場で使いやすく、意味のある形で導入していくことが大切だと考えています。

○岩本教授
 商品開発やマーケティングでは、現場に出て情報を集めることが重要でしたが、大規模な調査はコストが高く、大企業でなければ難しい面がありました。
 しかし今は、AIを使うことで、AIが一種の「ペルソナ」(=架空の顧客像)となり、事前の下調べができる時代になっています。だからといって、現場に行かなくてよくなるという話ではありません。むしろ、より高いレベルで現場に向き合えるようになる、ということです。
 低コストで、誰でもビジネスのきっかけとなるニーズの当たりをつけやすくなり、その上で実際の現場により深く入り込んでいく。こうした形で、現場に即した商品開発が可能になります。こうしたAIを前提に、課題を考え、ビジネスを組み立てられる人材を育てていく必要があると考えています。

テーマ2:実践的教育研究環境の整備と社会実装について

○福田教授
 学内にチーズ工房を整備し、市販するチーズを実際につくりながら、その中に学生教育を組み込んでいくことをめざしています。令和9年度には「チーズ学」という、チーズに特化した産学連携科目を開講する予定で、全国的にも初めての取組になるのではないかと考えています。成績優秀で意欲のある学生には、チーズ製造学実習として、チーズ工房の中で実際に製造を行っている方を講師に迎え、より深く学んでもらいたいと思っています。
 ただ、大手企業の工場は異なりますが、チーズづくりは職人技の世界で、気温や湿度に合わせた感覚的な作業が今も主流です。そこで、試行錯誤の時間がない教育においては、センサーを使って製造工程を「見える化」し、北見工業大学の先生方とも連携しながら、製造プロセスを理解しやすい環境を整えていきたいと考えています。将来は、AIがチーズづくりを優しく教えてくれる、そんな時代が来たら面白いですね。

○岩本教授
 福田先生がお話しされたように、清酒学に続いてチーズ学を産学連携科目群として位置づけ、これらをフードバリューチェーンコーディネート人材育成プログラムに取り入れていきたいと考えています。学部教育で培ったノウハウを社会人教育に生かすなど、教育の枠を超えて広げていくことも重要です。
 特に大きいのは、学内に実際に食品をつくる現場があることです。この分野を本格的に学びたいなら帯広に来なければならない、そう言ってもらえるような学びの場をつくりたいと考えています。他大学の先生方にも関わっていただきながら、ここでしかできない教育を実現したいと思っています。
 また、社会人教育については、関連企業の方々にも関心を持ってもらい、自分たちのビジネスや資材がフードバリューチェーンの中でどうつながっているのかを理解できる人材を育てていきたいと考えています。

○宮竹教授
 正直に言うと、私の研究分野である堆肥化は、かなり厳しい状況にあります。堆肥化を専門とする研究者は年々減っており、このままでは誰が次の技術を担い、農家の皆さんに指導していくのかという課題があります。
 まずは身近なところからで、本学の農場でも「生堆肥」が使われている現状を変えなければなりません。そのため、農場職員の方々の人材育成から取り組んでいきたいと考えています。また、全国の大学農場や試験場から指導の依頼もありますが、大学はハードルが高いと感じる方も多い。そこで、堆肥化ロボット施設を活用した講習会を通じて、指導と普及を進めていきたいと思っています。
 少し明るい話としては、この事業がきっかけか博士課程への進学を希望する学生が出てきました。こうした若い担い手が、今後さらに育ってくれることを期待しています。

テーマ3:地域や企業等との連携の醸成について

○宮竹教授
 今回、まずは堆肥化ロボットを大学に導入しましたが、これからは自立型の研究を進めていきます。ただ、いきなり農家さんの現場や十勝農協連さんの施設で使うのは難しいと考えています。自立化したときに機械がどう動くか分からない段階では、安全面の不安もあるからです。まずは大学でしっかりと検証を行い、その上で十勝農協連さんの施設に実装し、さらに農家さんへと普及させていく、そうした段階的な進め方を考えています。
 実際、先月は別の県で農家さんや県職員の方を対象に、堆肥化ロボットの講習会を行いましたが、非常に関心を持っていただけました。県の担当者からも、補助金制度に乗せやすいのではないかという声があり、資金支援とあわせて全国への普及を進めていきたいと考えています。

○福田教授
 昨年度、「ミルク&チーズコンソーシアム」を立ち上げました。このコンソーシアムには、大手乳業メーカーだけでなく、地域の中小チーズ工房、Jミルクなど、様々な立場の方々が参加しています。めざしている方向は一つで、持続可能な酪農の実現です。
 具体的な取組としては、社会人向けのチーズ製造講習会を年1回、これまでに2回実施しています。全国のチーズ工房や乳業会社の若手の方に参加いただき、現場で活躍する製造者を講師として実践的な指導を行っています。さらに今年度からは、乳酸菌の取り扱いに特化した講習会も新たに始め、好評をいただいています。こうした現場の声やネットワークを、この事業にも反映させ、将来的には新商品の開発や市場展開につなげていきたいと考えています。

○岩本教授
 ぜひこの取組を、地元企業や団体の社員研修やスキルアップの場として活用していただきたいと考えています。私たちがめざしているのは、知識を教えることよりも、現場で対応できる力や実践力を高めることです。そのため、大学教員だけでなく、現場をよく知る実務家や専門家の方々にも、ぜひ教える側として関わっていただきたいと思っています。
 また、課題解決に取り組みたいテーマやお題を企業の皆さんから提供していただくことも、大変ありがたいです。大企業であれば自前で人材育成や調査ができますが、中小規模の企業では難しい場合も多いと思います。こうした場を通じて、企業同士の横のつながりも生まれ、知見を共有できる機会になるはずです。このプログラムは、地域の皆さんと一緒に共創していく場として育てていきたいと考えています。


(来場者質問コーナー)
Q:福田教授の研究に関連して、ライブラリー化する際に、どのような工夫をすれば、多くの人が使いやすい仕組みにできるのかを教えていただきたい。

A:ライブラリー化については、これから整理を行うので将来の話になりますが、重要なのは、価格と信頼性です。安定したスターターを継続的に供給できる体制をどうつくるかが一番の課題だと考えています。
 特に乳酸菌は、汚染や性質の変化があると大きな問題になります。また、大手や海外製のスターターと同じ土俵で勝負するのは難しいため、ユニークで、「こういうチーズを作りたい」というニーズに応えられる乳酸菌を集めたライブラリーづくりが重要だと考えています。

まとめ:10年後の出口イメージ

○宮竹教授
 私の分野は堆肥なので、やはりめざしたいのは「良質な堆肥が当たり前に地域を回っている社会」です。十勝では多くの家畜糞尿が出てきますが、それを地域の中で循環させるだけでなく、しっかり良質な堆肥にすることで流通に乗せることができます。すでに海外に輸出している事例もありますし、北海道から本州へ運ぶことも十分可能な社会になっていきます。まずは、良質な堆肥を当たり前のようにつくり、使う社会を実現することをめざしていきたいと考えています。

○福田教授
 夢ですが、「未利用資源」という言葉がいらなくなる酪農産業にしたいと思っています。本来は、すべてが何かしらに活用されるべきもので、捨てられるものがない産業であってほしい。未利用資源という言葉そのものがなくなるような、すべてを生かし切る酪農、そういう社会をめざしていきたいと考えています。

○岩本教授
 人材育成は、大学だけでできるものではありません。地域の産業の方々をはじめ、いろいろな立場の人たちが関わり合いながら、地元の人材を一緒に育てていくことが大切だと思っています。産学官金のベストミックスと言えるような、人材育成のエコシステムを十勝につくっていければと考えています。

カテゴリ
活動報告
タグ
計画推進事業大規模農業生産基盤強化事業酪農・畑作バリューチェーン強化事業人材育成事業
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