この法律ができる前まで、農林水産物の安定供給は農林水産省、食品の安全確保は厚生労働省といったように、各行政機関が多くの法律に基づいて規制を行っていましたが、2001年の牛海綿状脳症(BSE)の国内発生や2002年の食品の偽造表示などにより消費者の国や食品に対する不安や不信が高まりました。そこで、食品の国際規格を策定しているコーデックス委員会の考え方(消費者の健康保護が最重要、フードチェーンアプローチ及びリスクアナリシス)に従って食品の安全確保を行うために本法を2003年に制定しました。
日本国憲法第25条に「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と記載され、「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と記載されています。つまり、国は、国民(消費者)が飢えることなく、食品によって健康を害されることない社会を維持しなければなりません。そのために、感染性と病原性が高い病原体が畜産農場に広がり、畜産物の安定供給が滞らないように「家畜伝染病予防法」、農場や養殖場で使用される動物用医薬品や農薬が農林水産物に残留して人の健康を害さないように「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」や「農薬取締法」、安全な食品を供給するために食品の製造方法や保存方法などの規格・基準を定めた「食品衛生法」、そば、小麦、卵などによる食物アレルギーを防止するための「食品表示法」など、多くの法律を制定してきました。
しかし、新規加工技術の導入、食品の大量生産や広域流通、農林水産物の生産から加工食品の販売まで一貫した大企業の出現、食の多様化などの食品産業の発展と消費者の食生活の変化と要求に対応できなくなってきました。そこで、食品の安全確保に関する国の基本理念を定め、その基本理念に従って総合的な施策を行えるようにするために本法を制定しました。基本理念の中にコーデックス委員会の考え方が強く反映されています。消費者の健康保護が最重要は第3条に、フードチェーンアプローチは第4条(食品供給工程の各段階における適切な措置)に、リスクアナリシスは第2章(第11~21条)に記載されています。本法の制定により、農林水産省、厚生労働省、消費者庁などの行政機関は、上述の法律に基づく規制を新たに制定したり、変更したりする場合には、食品安全委員会に意見を聴く必要があります(第24条)。なお、食品安全委員会は、第23条に基づき内閣府に設置された機関で、食品が人の健康に及ぼす影響を科学知見に基づいて評価(食品健康影響評価)したり、内閣総理大臣に意見を述べたり、行政機関に対して勧告することができます。
