
公衆衛生学は、すべての人々が健康で快適な生活を送ることができる社会を作るための学問です。獣医師は、病気の動物を治すことだけではなく、健康な家畜を育てること、安全な食品を提供すること、動物の病気を人に移さないようにすることなどを通じ、このような社会の実現に貢献することを求められています。当研究室は、そのための教育や研究活動を行っています。
効率的、効果的な研究活動を行うために、現在、みなさんがどのような生活を送っているのか教えていただきたくアンケートを実施していますのでご協力ください。
コーデックス委員会という組織を知っていますか。コーデックス委員会は、消費者の健康保護と公正な貿易を行うために世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)が1963年に設立した組織で、食品の国際規格を作成しています。このコーデックス委員会は、食品の安全を確保するためには、最終製品としての食品だけでなく、農場から食卓まで(フードチェーン)の全体について消費者を含むすべての関係者が理解した上で、リスクアナリシスに基づいた規制を必要な段階(農場、加工、流通、調理など)に行うことが必要であると言っています。日本は、この仕組みを法律に基づいて確実に実施するために食品安全基本法を2003年に制定しました。
当研究室は、この仕組みを科学的側面から支えるため、フードチェーンにおける有害微生物汚染の実態解明及び規制効果に関する研究活動を行っています。

獣医師の仕事は、動物の病気を診断する、病気を治すという、いわゆる動物のお医者さんの仕事だけではありません。獣医師法第1条に、「獣医師は、飼育動物に関する診療及び保健衛生の指導その他の獣医事をつかさどることによって、動物に関する保健衛生の向上及び畜産業の発達を図り、あわせて公衆衛生の向上に寄与するものとする」と記載されています。飼育動物とは、牛、豚、鶏などの家畜や、犬、猫などの愛玩動物(ペット)などの一般に人が飼育する動物を指しています(獣医師法第1条の2)。動物に関する保健衛生の向上、畜産業の発達、公衆衛生の向上に寄与するという仕事とはどういうものか、皆さんはご存じでしょうか。このコラムでは、社会で働くこのような獣医さんの仕事を紹介していきます。
第1回 食肉衛生検査所で働く獣医師
第2回 家畜保健衛生所と保健所で働く獣医師
第3回 検疫所と動物検疫所で働く獣医師